澱みの中に沈む未練に触れて浄化した先にあるものは
- ★★★ Excellent!!!
事故物件に泊まり込み、心霊現象を解消する霊的特殊清掃人とアシスタントのバディ。
この文字だけでも心が躍るような始まりを感じる。
事故物件を浄化する、ということなのでホラーを感じられるだろうが、一貫して書かれるのは人の業だ。
それは事故物件に巣食う何かだけではなく、それぞれの人生に影を落とすものにも触れる。
時には目を背けたくなるような業を見せられながらも事故物件に残された未練を浄化していくのだ。
その浄化をしているのが無量 弐千佳であるのだが、とにかくドライで格好良い。だが、その浄化は見ているこちらが息を呑む程に凄まじい疲労を感じられる。
どろり、と血が流れ落ちる。
それは生きている証でもあり、体の澱みを脱ぎ捨てる描写でもある。
重々しい描写がありながらも読み進めることが出来るのは有瀬 安吾というアシスタントの存在がある。
何故なら彼はキャッチコピーにもある通り、ポジティブすぎるチャラ男である。
それ故に重々しい場にそぐわぬ発言で怖さを払拭し、時に笑わせてくる。ゴールデンレトリバーのような眩しい彼の笑顔に救われる回が多々、あるのだ。
そんな二人だからこその掛け合いがこの物語の見所でもある。
そしてこの物語は食べるという行為にも重点が置かれているように感じる。どんなに禍々しい部屋を前にしても、食べることは生きること――。温かいご飯を食べる二人の姿に「大丈夫」だと思えるのだ。
澱みの中にある部屋が浄化されて、気持ちの良い風が吹く時、読み終えたこちらもなんだが安堵する。
断ち切った未練の後には穏やかな雰囲気が残る物語です。