魔族と人が紡ぐ笑えて泣いて楽しめる純愛の物語
- ★★★ Excellent!!!
物語の冒頭で突然のクライマックスから始まる物語はブラック企業を思わせる過酷な環境で働いてきた彼らの苦悩がしのばれる。
何故なら、魔王がいなくなった彼らの口から出た言葉は「自由だ」なのだから。
もうここから引きこまれずにはいられない。ここから始まる物語があるんだ、と気づいたら夢中になって読んでいた。
物語の主人公、ガルシは魔王軍四天王の一人である。
拙者とござる口調の印象的な青年はある時、男性に絡まれている女性、カノンを助ける。カノンはガルシの推しキャラの声優で……と物語は進んでいく。
この物語は魔族と人の紡ぐ物語ではあるが、魔族と人の間に線引きはない。あるとしたら肉体の差くらいだろうか。
例えば体を変化させられるくらいの。
くらいの、と書いたが、この体を変化させられることが後々、ガルシを苦しめるのだが、その過程がガルシの真面目な性格を表していて、見守りたくなってしまうのである。
魔族である彼らも人間と同じように悩み、恋をする。人間社会にすっかりと馴染んでいる彼らにひたひたと近寄る過去がガルシとカノンの間にほんのりと暗い影を落としていく。
それはかつて魔族として勇者と対峙していた彼らに過去を突きつけるものだった。
過去はなかったことにならないが、変えることはできる。
ひたむきでまっすぐで、カノンをただ一人の人間、「カノン」として見てくれるガルシの言動にこちらも心がぐっとつかまれる。
ガルシのオタクとしての姿勢、人との関わり方、そして、カノンに対するまっすぐな思いにペンライトを振って応援したくなる。
ガルシだけではない。ガルシの仲間である四天王の皆様も魅力に溢れた人だ。ひとりひとりが仲間のことを気にかけて、時に諭してくれる。なんて素敵な関係性だろう、と拝読しながら思わず頬が緩んでしまう。
これはラブコメであり、純愛である。笑えて泣けて時に切なさと苦しさに共に涙しつつ、クライマックスへと向かう物語に立ち上がって拍手を送りたくなる。
私はとある人の正体を見抜けずに驚いてしまった。驚きの展開に読む手が止まらない物語、笑えて泣ける恋愛を楽しみたい方におすすめです。