概要
親友の死と、その遺書に残った違和感。言葉の調子も、折り畳み方も、一人称も、何もかもが親友の幸仁(ゆきひと)らしくない。
本当のことを知るために、周(あまね)は「幽霊が視える」と嘘をついた。
嘘から始まる、松虫の頃。りんりんと虫の音が響く、秋。
静かな教室に響くのは、スズムシの声。埋火のように消えない熱がある。
「ぼくらはみんな、うそつきだった」
学園で交差する『嘘』と『真実』と『うそつき』と。それから、透明なまなざし。
これは果たしてやさしい嘘か。これは、嘘つきが嘘を暴く、やさしくない現実のミステリー。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!松虫の声とともに浸る文学的で上質なミステリー
松虫が鳴く頃、親友が死んだ。
亡くなったのは鈴懸幸仁(ゆきひと)。道兼周(あまね)の親友であり、彼の唯一の「ほんとう」を知る人物だ。
幸仁の下駄箱には遺書が残されていた。だが幸仁の「ほんとう」を知る周はその死に疑問を覚え、真相を探るために「うそ」をつく。
この作品で語られるテーマは「うそ」と「ほんとう」です。
勿論そこにはミステリー作品として、隠された真実を明るみに出していくという意味もありますが、この作品では同時に「学校」という集団生活における「うそ」と「ほんとう」も巧みに描き出しています。
嘘をつくのは悪いこととされていますが、自分や大切な人の身を守るためにも時には嘘をつくことは必要で…続きを読む - ★★★ Excellent!!!優しくない世界で嘘をつく
主人公の周には一人の親友がいました。その死から物語は始まります。
嘘で繋がり、嘘に守られた二人の関係。
友の自死を否定し、真相を追い求めてまた周は嘘をつきました。
それによって、残酷な学校の有り様、自分本位の悪意と直面していきます。
嘘は誰もがつくもの。自分の為、誰かの為、守る為。使い方次第では優しく温かい気持ちにもなりますが、他人の魂を残酷に傷つける事もあります。その境を越えてしまうのは、どんな人間でしょうか。
心地良い人間の優しさも、生々しい人間の欲や悪意も、美しい文章が繊細に描いています。
りんりんと鳴く松虫の声のような爽やかさが待つラストを、見届けてみませんか。 - ★★★ Excellent!!!それは『うそつき』と『ほんとう』の曖昧な物語
『うそつき』と『ほんとう』、言い換えれば善悪にも通じる言葉は親友の自殺という死から始まりを告げる。
死は時に誰かの話題の種にもなり、ともすれば何かを変えると思われるような衝撃的なものだ。
その死を自殺を信じていないのは主人公である周だ。
彼は嘘を吐き『うそつき』になることで親友の死の真相を暴いていこうとする。
しかし、彼の『うそつき』は人を貶める嘘ではない。隠さねばならないもの、そうして誰かの為に彼は嘘を吐く。
周という人物は一貫した目的の為に優しさ故の自己嫌悪に苛まれることがあるが、そうした周だからこそ、見守るこちらもはらはらとしてしまうのだ。
嘘は悪にもなるが善にもなりうる。そして善は容…続きを読む