青春ミステリーとして丁寧に編み込まれた一作。
物語のはじめは、さらりとした夏のプールの冷たさと、どこかエロティックさを感じる出会い。
失踪事件の謎をとくべく、十四通の手紙を探してそのメッセージの意図を探る中で、少しずつ謎の糸がほどけていきます。
豊かな感情表現と繊細なタッチで描かれるため、謎に対する好奇心が刺激されると共に、見えない恐怖や青春の爽やかな甘みも楽しめます。
特に主人公・和樹と茜の関係は、物語で度々登場するラムネのようです。
甘さと喉を通り抜ける爽やかさ、炭酸のシュワシュワと弾ける刺激。
この関係に名前をつけるとしたら何になるのだろう?
あなたも、この、ねっとりとした感情のプールに飛び込んでみてください。
一気に最後まで読み切ることができます。
これは、十代の彼等が大人になるため。
そして、10年前の夏の日に立ち止まったままでいた、ひとりの大人が、次の夏へ進むための物語だ。
10年前に失踪した少女が残した手紙を中心に、少年達は、まるで宝探しでもする様に謎解きの夏を駆け巡る。
14通の手紙を繋ぎ合わせた時、彼らは何を知り、何に気が付つくのか。
いくつも散りばめられた謎を解き明かすとき、衝撃の事実を目の当たりにする彼等は、一体どうやって青春の一頁を閉じるのか。
この物語には、夏の暑さ、虫の声、山から吹き抜ける風、そしてプールの匂いが一緒について回るのだが、それがとても心地良く、読者の自分も物語の中に入り込んだ気分になる。
あなたも彼等と一緒に、この夏の謎を駆け抜けてみませんか。
とても丁寧に編み上げられたミステリーですので、あまり詳しくは語れません。
けれど素敵な読後感は約束できます。
物語のはじまりは、ごく普通の夏。その中に少しずつ滲む違和感と気配が、読み進めるたびに重さを増していきます。まるで澄んだ水の底に、誰にも見えない何かが沈んでいるような気配。
この物語の魅力は、謎だけを追わせないところだと思います。誰かの言葉、誰かの沈黙、笑い声や戸惑いすら、すべてが伏線のような気さえしてしまう展開。繊細で、それでいてときおり大胆な描写。
こんなの、読む手が止まりませんよね。
そうして訪れたラスト、息を呑むとはこのことだと実感しました。
何かを失ったような、でもどこかで救われたような奇妙な感情。
悲しいとか、切ないとか、怖いとか、そういう単語だけではとても言い表せません。ただひとつ言えるのは、この物語はたしかに「青春」を描いていて、喪失した「何か」を抱え、それでも進んでいく若者の物語なのだということ。
この度は素敵な物語をありがとうございます。
まずキャラが濃いです! ガチムチな河童を想像して笑いました。
さらには陽キャな友人の恋、学校のマドンナ的女性の真実の姿などなど、高校生感満載で楽しめます。
私のイチオシは茜さん!(ごめんね主人公)
でもこれミステリーなんですよ。
わちゃわちゃした青春から一転、不穏な影……。
人物を明確に想起させる筆致と、豊かな情景描写。そして開示する情報のコントロール。
筆力の裏付けがあるので安心して物語を追うことができます。
高校生が高校生なりにあがき、傷つく。前を向く。
大人は大人の責任と無責任と人生とを背負う。
そんなところがきちんと描かれていて、読みごたえのある物語でした。
「琥珀の水面」。
その熱く溶け落ち、閉じ込められた心の意味を受け取ってみてください。