概要
ある日出張先のホテルに届いた、主人公への伝言メッセージ。
メッセージの主の名前は<廉井徳夫>。
その名前に記憶はあるが、誰なのかはっきりと思い出せない。
そして主人公は一人の新聞記者の力を借りて、<廉井徳夫>を探し始めます。
物語は25年前の神戸市立中学校(架空)で起きた三つの事件を皮切りに、過去や現在の事件へと派生していきます。
果たして<廉井徳夫>とは誰なのか?
彼の目的は何なのか?
モキュメンタリーテイストのミステリー作品をお楽しみ下さい。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!社会の中で起こったミステリー
ある日、主人公のもとに「廉井徳夫」を名乗る人物からメッセージが届く。これを新聞に載せてもらったところ、そこの新聞記者が調査に名乗り出る。
現代が舞台であるものの、基本的に登場人物の回想で進み、2000年代、主人公たちが学生であった頃の話が繰り広げられる。もちろんモキュメンタリーとしては素晴らしい作品だが、私からはこの2000年代の世界観について言及したい。
2000年代にもいろいろなことが起こっている。震災や事件、切れる17歳なんて言葉も話題になった。私の地元でも若者の事件が発生していたらしい。こうした2000年代の空気や雰囲気が作品の中に取り入れられ、息をしている。物語はもちろん、この…続きを読む - ★★★ Excellent!!!震災の街に響く、匿名の闇に生まれた記憶の亡霊
震災後の神戸という舞台に、記憶と噂、そして「言葉」が絡み合う『廉井徳夫君を探しています』。読んでいて、まるで現実と幻想の狭間に迷い込むような感覚を覚えました。六散人氏の筆致は冷徹でありながらどこか詩的で、匿名社会に潜む暴力と、それに無自覚に加担してしまう人の脆さを鋭く抉り出しています。
“廉井徳夫”という名前が実体を持たない存在であるほどに、人々の恐怖と後悔がそこに形を与えていく構図は見事で、まるで都市伝説が現実を侵食していく様を目の当たりにしているようです。震災で失われた街並みの中、語り継がれる「記憶」は真実を救うのか、それとも新たな歪みを生むのか――
虚構と現実、記憶と忘却の境…続きを読む - ★★★ Excellent!!!友人であるはずの廉井徳夫。だが思い出せない。思い出す出してはいけない!
主人公の紀藤宗也は、出張先のホテルに届いた謎のメッセージ「そろそろ思い出してよ。ヤスイトクオ」によって、中学時代の友人であるはずの廉井徳夫の名前だけは鮮明に思い出すものの、その顔や関係性に関する記憶が完全に欠落していることに気づきます。
そして、廉井徳夫の存在が「絶対に思い出してはならない」ほど忌まわしいものであったと。
ストーリー展開がユニークで、新聞の尋ね人広告を見た新聞記者が、主人公に代わって「廉井徳夫」を探し始めて、取材記録を残していく形で進んでいきます。
ネットの噂では、「震災で亡くなり、夜中に学校をうろつく幽霊」という噂もありました。
廉井徳夫の名前を思い出すとき、何が起こ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!あなたは一体、だれ?
これは、主人公に送られてきた、1通の謎のメッセージから幕を開ける物語。
記憶の中の違和感をたよりに、過去を探る主人公と、その関係者たち。
「ヤスイトクオ」の存在を辿るうちに徐々に明らかになる、おぞましくも哀しい出来事の数々に、毎話ごとに衝撃を受けるような読書体験が待っています。
緻密な伏線や、計算され尽くした情報の出し方はまさにミステリーですが、
25年前に起きた出来事をめぐる様々な登場人物たちの思惑や、主人公の揺れ動く心理を追求した描写は、重厚な人間ドラマを見ている気持ちにもなります。
そして、個人的な感想にはなりますが、これは謎が解けて万事解決、というミステリーではないと思います。…続きを読む - ★★★ Excellent!!!一体誰なんだ、何なんだ。廉井徳夫……
本作は、ひとこと紹介通りの言葉が終始頭に浮かぶ物語になっております。康井徳夫と言う謎の人物に終始翻弄されていきますし、廉井徳夫に繋がるであろう数々の事件も複雑に絡みあってくるので、その混乱が深まるばかりです。けれど、その混乱が面白くて、「どうなるんだろう」と読む手が止まらなくなります。
作者様の素晴らしい技巧が駆使されて、紡がれている物語になっておりますので。多角的な面白さが楽しめますし、一体、誰が。何が。どうして。と言う疑問が尽きない事件の数々が持つ深みに私達読者はハマるばかりです!
ホラーでもあり、ミステリーでもある今作。色々な不可解が重なる面白さが最高です!なので、皆様もぜひ読んで…続きを読む