自らの死を予見していた知人が“私”へ渡した1冊のスクラップブック、そこにはさまざまな事件に関する資料がまとめられていた。なんの関連性もないはずの事件であるはずが、すべてに1枚の“呪いの写真”が関わっていて……。思うところは多々ありつつも、“私”はまとめられていた内容を書き起こす作業を開始したのだった。
各話で綴られるものは過去に起きた事件の記事やネットに投稿された体験談等々、それぞれなんの繋がりもないはずの情報です。そしてその端々に現れる、見たら呪われるとの曰く付きな「ヨシエさんの写真」は、ただのオカルト話なのです。でも、情報の断片がパズルさながら組み立てられて完成されていく、ヨシエさんならぬ“城山佳江”の像により、ただのオカルトが最高に最悪な恐怖と成り果せるのですよ。物語を紐解くにつれじりじり這い寄られるこの感じ、たまりませんねぇ。
本人が登場しないからこそ際立つキャラクター小説、そのおぞましさを背筋で味わっていただきたく。
(「恐怖へ迫るドキュメンタリー=モキュメンタリー」4選/文=高橋剛)