【13】紀藤宗也の独白(4)

その夜私は、また母の夢を見ました。

母の手はいつものように真っ赤でした。


母は足元をじっと見ていました。

母の足元には何かがありました。


それが何なのか、私ははっきりと知っているのに思い出せません。

そのことがとてももどかしくて、私は母に問い掛けようとするのですが、何故かまた声が出ないのです。


そして声が出ないことで、私の中のもどかしさが、どんどん膨らんで行きました。

それはきっと、私が母の足元にあるものの正体を知っているからなのです。

それなのに、それが何なのか思い出すことが出来ないのです。


それは思い出してはいけないものなのかも知れません。

きっとそれは、悪いものなのです。

きっとそれは、忌まわしいものなのです。

きっとそれは、恐ろしいものなのです。


それでも私は必死で思い出そうとしています。

そんな私を母は見ていません。

母はただ、足元にあるものをじっと見ているだけなのです。

ただじっとそれを見降ろしているのです。


それを見降ろしている母は、笑っているようでした。

その笑顔がとても恐ろしいのです。

その笑顔が、次に私に向けられることを、何故か私は知っているのです。

そして母が私に笑顔を向けると、恐ろしいことが起きることも知っているのです。


私は恐怖の余り、母から逃げ出そうとします。

しかし逃げることが出来ません。

体が思うように動かないのです。

必死で足を動かそうとするのですが、ゆっくりとしか体が反応しないのです。


私は恐怖に駆られて叫び声を上げました。

その声で私は目覚めました。

私は背中に、ぐっしょりと冷や汗をかいていました。

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