美味しそうな給食のメニュー。こんな豪華で素敵な食事ができるなんてと羨みながら、無邪気で美味しそうな生徒たちのコメントを微笑ましく読んでしまう……あれ、なんだかおかしい。
小骨が刺さったような違和感。読み進めるにつれて少しずつ形がはっきりとしてくる不安。あんなに楽しそうな食事から血腥い臭いが漂ってきたと思ったのは、気のせいでしょうか。
「食後に体調がすぐれない場合は、無理せず保健室に申し出てください」そんな決まり文句を最後に目にするたびに、だんだん寒気がしてきてしまう。
普通の学校の給食献立表だったはずなのに、次が気になってつるつる読んでしまう。かと思えば、カッと喉の奥が焼けるような急展開、ねちゃりと絡みつく嫌な感覚。しかし、途中でこの気味の悪い味に懐かしさすら感じてしまう。もったいなくて、最後の一口を呑み込むのが惜しい。しかし、これは呑み込んでしまってよかったのか。
じわりと後に尾を引く味わい深いホラー作品でした。
給食の献立表について
わたしは、小学校、中学校と給食を食べました。
小学校の時の記憶の方が強く、砂糖がついた揚げパンや畑のお肉と称する、大豆で作られたお肉など、いろんなものを食べました。
好きなのもあれば苦手なものもありました。
当時は献立表を見るのが楽しみでしたが、昔は今と違って、原材料名までは書かれていなかったように思います。
今なら当たり前の原材料名ですが、あの頃食べて成長させてくれた給食にはどんなものが使われていたのだろう。
あまりに当たり前すぎて大切なことを見失ってしまいそうになる毎日をこの小説は教えてくれました。
とっても怖いホラーですが、とても面白いです。
お薦めいたします。
日常にうまいこと溶け込みながらも癖の強さを隠しきれない、斬新なテンプレートモキュホラーシリーズの新作がなんと、コンテスト応募用の特盛スペシャルでした。
ブラックユーモア全開のホラーコメディから始まった分、ジェットコースター並みの緩急を感じますが、子供も大人も親近感を味わいやすく、誰もが歩む道で出会う様々理不尽に思わず自分の人生を重ねてしまいます。
伏線が綿密に貼られていたので、推理が当たる爽快感をたらふく味わえる素敵なミステリー作品でもありました。
限られた情報量で考察を掻き立てるテンプレートパートで終わらず、モキュメンタリーならではの丁寧な考察と答え合わせの提示の仕方にもとても感動しました。
コメント欄と合わせるとより楽しめますが、ヒントの過剰摂取注意です!
余談ですが、私はホラー耐性がある程度身についた人間なので、ミステリー作品にありがちなサイコパス探偵の如く、人の生死をただの“エモさ”として消費する悪癖がありました。
食物アレルギーに日々苦しまれているため、ホラーコメディとして描かれていたはずの1日目の献立表の冒頭で、絶対に意図しなかった方角からの恐ろしさを思いっきり浴びました。
他のみんなが普通に食べられている物を自分だけが食べられない生活に、“食育”のスパイスが効きすぎて、最高にホラーでした。
めでたしめでたしです。