【06】紀藤宗也の独白(2)

その夜私は、またあの夢を見ました。

それは母の夢でした。


母はいつものように笑っていました。

そして母の手はやはりいつものように、真っ赤な色をしていました。


もしかしたら、その人は母ではなかったのかも知れません。

母だったような気もしますが、そうでないような気もします。


ただ、その女の人の手は、いつものように真っ赤な色をしていました。

その真っ赤に染まった手が怖くて、僕は叫び声を上げようとしていました。


でも声は全く出ませんでした。

夢の中だったからかも知れません。


声が出ないことが余計に怖くて、私は大きく口を開いて叫ぼうとしました。

しかし、やはり声は出ませんでした。

それでも恐怖に駆られて、僕は声にならない叫び声を上げ続けました。


それでも真っ赤な手をした女の人は、笑っていました。

その笑顔がとても怖くて、私はまた叫び声を上げようとしました。

何度も、何度も叫ぼうとしました。

でもやはり声は出ませんでした。


そのうち女の人が、真っ赤な両手を私の方に差し出そうとしているのが分かりました。

実際にはまだ、女の人の手は動いていないのですが、私に向かって差し出そうとしていることだけは、何故か分かるのでした。


その手が差し出されると、何か怖いことが起きるということも、私には分かるのでした。

そして私は、また叫び声を上げようとしました。

でもやはり声は出ませんでした。


やがて私は目覚めました。

私の背中は、冷や汗でぐっしょりと濡れていました。

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