大学のサークル仲間である英志と良介。車を走らせ、この町一番の夜景スポットを訪れる。
……夜、ブラックコーヒーを片手に恋バナをする時点で、英志は苦さを噛み締める気分だったのかもしれません。それなのに、相手から返ってくるのは思っていた以上に〈優しい〉答えだから……。ミルクティー、その甘さこそが痛みをもたらすのかもしれませんね。
小説は言語の芸術ですが、表現の真価が言葉にあるとは限りません。この小説において最も印象に残るのは、彼らの浮かべる表情です。良介の髪の毛に手を伸ばす、英志の表情に注目してください。それは言語を介して読者に想起させる、この小説の味、そして香り。甘く沁みるミルクティーは、読者に供されているのです。