祖母の死をきっかけに、「見えてはいけないもの」がはっきりと見てしまった高校生・航。
それは恐怖の始まりか、それとも誰かを救うための宿命なのか――。
日常に滲む異変、息を呑む緊迫の描写。
航が“見てしまう”のは、幽霊だけではなく、死者の最期の記憶。
他人の最期を見届けるたび、彼は一つの真実と、一つの痛みを知っていく。
恐怖と哀しみが交錯する中で描かれる、“声なき想い”と“生きる者の選択”。本作は心を締めつける、上質なホラー・ヒューマンドラマです。
恐怖の中に紛れた“声なき遺言”は、読む者の心にも語りかけてきます。
その声を、あなたは聞き取れるだろうか。
霊感がある主人公のお話は決して珍しい訳ではありません。むしろありふれていると言っても良いでしょう。
ですが、この作品は「霊感がある」というありふれたテーマで終わらず、「霊感があるが故に気づいてしまう幽霊の訴え(遺言)を聞き届ける」という、
非常に深いテーマとなっているのです。
既に他の方がおっしゃっている通り、社会的問題までを追求しているかのように思えます。
何より、訴えかける霊の描写が「怖い」というよりも、「切ない」と感じるのです。
そして、問題が解決した瞬間のカタルシス。
これぞホラーとミステリーのハイブリッドの鏡。
文章も非常に読みやすく、主人公の心理や情景がスっと頭に入ってきます。
あらすじによると、どうやら主人公の家柄が特殊なようですね。それらの謎が、これからどうやって紐解かれてゆくのか、楽しみでなりません!