第一章まで読んでのレビューですが、一章だけであるのに「だけ」という言葉は全く適さない濃密さがあります。
物語の世界が自ずから頭に映像として浮かぶ、といったら良いのでしょうか。
舞台は近未来的なイメージの「チキュウ」とは別の星。そこで起こる異変に立ち向かうエージェントたち。それぞれがそれぞれに事情を抱えているのだというのは、登場人物一人一人の描写によって醸し出されてきます。
一章を読んで際立っているのは「タカト」の人柄です。彼の言葉や行動には勢いがあり、他の登場人物との会話から、彼が明るく人々を勇気づけていく人間なのだと感じ取れます。
しかし彼も「事情」を持つ人間の一人のようです。
事件は起こる。それも起こってほしくないところで。精緻に作り上げられた世界観に浸っている中に入る起爆剤。
カメラがフォーカスするように鮮やかに描き分けられた個性豊かな登場人物たちが、起こった事件にどのように絡みあっていくのか、とても気になります。
SFやスタイリッシュな雰囲気が読者を魅了する作品です。
この物語の舞台は、ルラキス星。地球は滅亡したが、人々はルラキス星で機械生命体アンストロンと共存している。
当然ながら星がすべからく平穏ということはなく、ここには平和を守る「セーラス」という組織があった。
セーラスに所属するエージェントたちは、日夜平和を守るために奔走している、というわけである。
科学の発達した星を、正反対のバディが駆け抜ける!
さて今回はタカトの身に何かあるようで――?
果たして彼らは仲間と協力しつつ、解決に導くことができるのか。
緊迫したシーン、きらびやかなシーン、どこを見ても洋画を見ているかのようで、満足度が非常に高い作品です。
そして何よりコーヒーやその他食べ物の美味しそうなこと。コーヒーは香りまで漂ってきそうです。
海外SF映画はお好きですか?
平和を守るエージェント、正反対のバディ、最高ですよね。
ぜひご一読ください。
『Dual Hunters 〜偽りの記憶〜』は、まず読んでいて驚かされるほど世界観が緻密で、それでいてとても読みやすいSF作品です。
まずは、物語が動くまでに、作品の世界観が描かれていきます。
人間と見分けのつかない機械知性体「アンストロン」、それに対処する組織「セーラス」、浮遊する乗り物や亜空間収納などのSF設定が次々と登場します。
ですが、不思議と置いていかれる感覚がありません。
それは、この作品が「設定を説明するための物語」ではなく、「物語の中で設定が自然に息をしている」からだと思います。
SF作品というと専門用語が多くて難しそう、という印象を持つ方もいるかもしれません。けれど本作では、その専門用語がむしろ世界のリアリティを高めるスパイスとして機能しています。
組織、装備、能力、コードネーム。どれもが作り込まれているからこそ、「この世界は本当に存在しているのでは」と感じさせてくれるのです。
そして、この複雑になりがちな世界観を、ぐっと親しみやすくしてくれるのが、主人公・タカト(コードネーム:レオン)の存在です。彼は過去に重いものを抱えている人物ですが、口調は明るく、感情表現も素直で、どこか人懐っこさがあります。
その明るさのおかげで、シリアスな状況や専門用語の多い場面でも、物語全体が暗くなりすぎません。読んでいると自然と、「この主人公についていきたい」と思わされます。
でも「なかなか物語が動いていかない…」と投げ出してはいけない作品です。
読み進めれば、どんどんそれが分かっていきます。
そして、本作はバディものとしても非常に魅力的です。
タカトの相棒ディーンは、冷静沈着で理知的なタイプ。直感と行動力で突っ走るタカトと、状況を俯瞰し支えるディーン。この対比がとても心地よく、二人の掛け合いが物語に安定感と深みを与えています。
さらに、周囲のキャラクターたちも役割がはっきりしていて、誰一人として「背景に埋もれている」感じがありません。組織もの・チームものとしての配置がとても上手いと感じました。
しかし、この作品でわたしが一番心を掴まれたのは、物語の奥に潜む「謎」です。
その象徴が、ある場面で主人公に向けて投げかけられる名前――
「リェフ」。
主人公はその名に心当たりがありません。
読者にも、当然ながら説明はありません。
けれど、その呼び名はあまりにも意味深です。
「なぜ、主人公は別の名前で呼ばれたのか?」
「それは過去と関係しているのか?」
「主人公の幼少期に、何があったのか?」
「そして、本当に“何も仕込まれていない”と言い切れるのか?」
体調の急変や、過去に関する断片的な描写、周囲の人物たちの反応が重なっていくことで、「これは偶然ではないのでは?」という疑念や、本作の核となるのでは、という確信が確実に積み上がっていきます。
「リェフって何なの……?」
「それ、いつ分かるの……?」
すごく、気になります!
また、世界観がしっかりしているからこそ、この謎が浮つかず、物語の芯として機能しています。主人公の明るさ、仲間との関係、日常と非日常のバランス。そのすべてがあて、「リェフ」という違和感が、より強く胸に残るのです。
これらの謎が、これからどう明かされていくのか。主人公は、自分自身について何を知ることになるのか。そして「偽りの記憶」というタイトルが、どこで、どのような意味を持つのか。
先が気になって仕方がない…そんな強い引力を持った、推したくなるSFバディ作品。
ぜひ、皆さんも先へ先へとクリックしてみてください!
滅亡の果てに地球から移住した人類は、「ルラキス」という星に安住を見いだす。
それから数千年後、人間は、自律した高次機能AIを搭載した機械知性体・アンストロンと暮らしていた。「アンストロンの法律」に基づき、その知性体も自由と平等を謳歌して暮らしていたが、数年前から突如として暴走するアンストロンが現れ、治安維持のための組織が作られた。
それが、特別管理派遣組織「セーラス」。
「セーラス」に所属する、タカトとディーン。
これは、この二人の友情を描いた、SFアクション作品である。
……というのが、本作のあらすじです。
別作品の続編とのことですが、私は本作から入っています。特に混乱することなく入れたので、前作を知らずとも楽しめる構成になっています。
SFというと科学や宇宙などの難しく重厚な設定と、社会・人類・未来など深いテーマが絡み合ったイメージですが、本作は良い意味でライトです。
人間味のあるキャラクターがリアリティを持ち、背後に人生の厚みが感じられる様子で描かれるため、気負わず読めるけど軽くなりすぎない、丁度良い塩梅です。
特にバディ同士の会話には、互いを思い遣る温かみがあって、読んでいて楽しくなります。
SF好きなもちろん、バディものやキャラ同士の掛け合いが好きな人にもオススメです。