戦争に向かう世界の中で、平和を愛する青年が音楽を奏で続ける物語
- ★★★ Excellent!!!
最近世間では明治大正風の和風ファンタジーが流行っていますが、こちらの作品も明治時代が舞台となっております。けれど、こちらは、華やかからは程遠い、戦争をテーマとした物語。富国強兵を目指す大日本帝国の姿の一側面を、克明に描き出しています。
といっても、がちがちのハードな戦記作品でもありません。なぜなら、主人公が、平和を愛し音楽を愛する青年だからです。彼はフルートを吹くことを通じて戦うことのむなしさを考え続けています。しかも、彼、実は鹿児島出身でネットミームで有名な薩摩隼人の家系の人間で、家族には武人として強く猛々しくあることを求められているのですが、彼は絶対に戦わないのです。ただただ音楽を愛し、そして恋人を愛しています。
物語は帝国時代のドイツと日本を行き来しながら話が進んでいきます。途中ファンタジー要素が入ってきて、主人公が不思議な存在に守られていることも明らかになってきますが、真ん中に据えられている音楽への愛は揺るぎません。彼の愛した音楽は今後もずっと受け継がれていくでしょう。