リチャードとエイダの、閉じられた二人だけの世界

前世のリチャード(になる前の存在)は、天使を殺戮した罪で死を与えられることになります。そこで、天使たちに”良い子”になれば天使を殺戮するのに使った能力を再び与えると約束させられ、その能力をすべて奪われた状態で人間として生まれ変わるわけですが……
私の独自解釈ですが、リチャードはエイダとの恋に落ち、エイダへの執着の気持ちを抱いてしまったがために、最終的には、天使たちに規定された”良い子”にはなれなかったのかな、と思います。
それは人間である私たち読者にとっては罪ではないのですが、画一的な清廉すぎる道徳観をもった天使たちにとって、人間の娘一人に執着することは望ましいことではなかったのではないか、と。天使というゆがんだ存在について、リチャードが生まれた意義から問い直す必要があり、人間と恋をしたリチャードはもはや戻れない(と天使に思われてしまったのではないか)、と思います。
そう考えると、ラストは温情のあるものではあったのかな……と思わなくもないのですが、読む人によっていろんな解釈ができる終わり方になっていました。
ファンタジーというよりはSFであり、西洋というよりはむしろ仏教的な価値観で描き出された物語だな、と解釈しました。

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