中小企業あるあるの状況で胸が痛い。
中小企業は総務の仕事に経費を掛けない。
雇う人材も製造と営業ばかりである。
そこにたまたま経理や営業事務、社会保険の書類提出業務などの心得があると、気軽に任されてしまう。
ほかの従業員たちは、観て見ぬ振り……なのではなく、そもそも雇用契約外の業務だし、苦手なのでできないのである。
かくて、一極集中になる。
本作はそんな「事務仕事を全部任されて死に体の寒野さん」と、新人君の心温まる……(?)交流の顛末。
ただの人情話に終わらない、「人間の心の澱、えぐみ」が剥き出しになる展開は安定の作者風味全開。
是非、そのえぐみを味わってほしい。
しかし、中小企業を知る者はこの物語に真の黒幕がいることを知っている。
「社長! ちゃんと仕事を差配せんかい! それができるのは貴様だけなんじゃ! 営業入れる暇があったら総務雇え! 気弱い素振りでなに職務放棄しとんねん! わかっとんのか! この能なし!!」
まあ、そういうことで、個人的には一日でも早くこの会社が潰れることをお祈り申し上げます。