宮田秩早

　逃れられない「分(ぶん）」、というのがある。 　いきものとして持つ限界……「分」もある。人間は空を飛べない、といったようなことだ。 「身分」は、生まれながらにして定められたものだ…続きを読む

　父親の足元から、ゴジラの影が伸びている。その後ろを、影を踏むように物語の主人公、見似等（ミニラ）が歩いている—―なぜとはなしにそんな姿が目に浮かぶ。 　この物語では、最初からその…続きを読む

かつて、社会に必要とされる制度であったのかもしれない。 自身の成長の過程で、必要であったものなのかもしれない。 だが、社会は変わる。 自分自身も、変わる。 変わったことに気づか…続きを読む

　生まれながらにして天に愛されているとしか思えない人がいる。 　才能豊かという意味でもそうだし、行った努力、研鑽が着実に身について上手くいく。そして絶体絶命の窮地をことごとく切り抜…続きを読む

中小企業あるあるの状況で胸が痛い。 中小企業は総務の仕事に経費を掛けない。 雇う人材も製造と営業ばかりである。 そこにたまたま経理や営業事務、社会保険の書類提出業務などの心得があ…続きを読む

　人生の終わりはそのひとの命の終わり、「死」だとするなら、「恋愛」の終わりってどこにあるんだろう？ 　告白？ 　結婚？ 　出産？ 　思いを確かめ合ったら、そこで成就？ 「物語」…続きを読む

　ひとりの敬虔な修道士が、やむを得ない事情で旅をしている。 　物語はそんな書き出しで始まります。 　やがて修道士は旅先でひとりの（？）しゃべる生首と出会い、お互いのことをすこし知…続きを読む

主人公はある日、生首を拾う。 その首は自分のことをアンデッドだと語る…… ……にしても、元気にもりもり御飯を食べるし、胴体とは切り離されていても胴体も生きているんじゃないかと推測…続きを読む

左腕のない当主、胴体のない生首 生首はある条件を満たせば、無限の富をもたらす存在になる…… 緩やかに過ぎゆく日々、親しくはあってもどこかに一線を引いて、互いのもっとも柔らかいところ…続きを読む

　ある日突然、兄を名乗る生首に居座られる大学生。 　その日から起こる妖しい出来事… 　なんというか、押しかけ生首の強引さに負けて迂闊に生首と接点を持ってしまったことで、非日常の…続きを読む

　主人公のもとに生首が現れ、つきまとう。 　最初、見ず知らずの女の首だったそれは、友人の生首にすり替わり、夜な夜な夢に現れて…… 　真綿で首を絞められるような、まさに悪夢の一ヶ月…続きを読む

登場人物たちは、それぞれに負い目を抱えている。 と、同時にだれかに償わせるべき傷を負ってもいる。 すべてを保留にして、ただ三人で暮らすことを楽しむ。 もちろん、その暮らしはどこ…続きを読む

　4000字弱の物語である。是非気軽に読んでいただきたい。 　青年らしい下心はあれど、まっとうで健全な主人公。特殊能力はない。けれども彼女を思う気持ちは海よりも深く山よりも高い。…続きを読む

　現代、正が友人として付き合っているランフォードとジェフ、ふたりの魔族にはいろいろと過去がある。 　ある日、彼らの話を聞いていると、どうやら昔、「生首の騎士としばらく旅をしていた」…続きを読む

　ひとりぐらしの女子大生が、ついつい道で生首を拾って…… 　冒頭から、猫の仔を拾って世話する調子で、ほのぼのハートフル。 　理由が分かれば胴も見つかるかも、と、古今東西の生首譚を…続きを読む

ある日、生首になってしまった姉。 主人公の少年は近所のスーパーマーケットが怪しいと睨むが…… 思い出してみよう。 幼いころのスーパーマーケットは、明るくてほしいものがなんでもあっ…続きを読む

機械人形と、歌姫が出会う。 機械人形は体制側。歌姫は反体制側。 歌姫は革命を鼓舞する歌を歌うがゆえに、やがて。 機械人形の手元に残ったホログラフ。人形はそこに「０」と「１」の狭間…続きを読む

　引っ越し先に生首がいる。 　突然現れるときもあるし、生首付きを選べるときもある。 　隠されている場合もある。 　そのどれも（あるいはだれも）がしゃべる。 　気がつけば「わたし」…続きを読む

　安定の『推し作転生もの』。 　『お約束』をひとつひとつ丹念に守った安定の結末！ 　……の、はずなんだけど、なんでしょう、この『凄い予想外の展開』感…… 　なにが予想外なのか、…続きを読む

　弟は兄を殺した。 　その兄はながらく弟を性的に虐待していた…… 　サスペンスで始まる物語は、殺され、ばらばらに解体された兄の首が『死ななかった』ことでホラーとも幻想小説ともつか…続きを読む

　思い人を手に入れたい、神様にお願いをしたら生首だけ家にやってきました……生きて、しゃべる。 　そんな衝撃の展開ですが、主人公も首の方ものんびりしています。 　呼ばれた首も、主人公…続きを読む

　魔女マルメイソンはある日、首だけになっていた…… 　衝撃の展開もなんのその、ほのぼの始まる生首ライフは生首になってしまった原因が明らかになるにつれ、波乱の度合いを深めていきます…続きを読む

　とろとろと眠り、ときどき目覚める「姉の生首」。 　姉と暮らす主人公はその姉を慕わしく思っている。 　姉もまた、妹である彼女を大切にしているようで…… 　平穏な日常に、ときおり差…続きを読む

　婚約破棄から始まる物語、たくさんありますよね？！ 　お好きな方も多いはず。 　でも、たくさん読んでいくうちに、「それがお約束」とはいえ、もう一味欲しいとき、ありますよね？ 　た…続きを読む

道に落ちてたお姫様の生首（ただし当初は泥だらけ）を拾った主人公は、かいがいしくその生首の世話を焼きますが… という出だしで始まる物語。 どうして主人公は生首の世話を焼くの？ な…続きを読む

ある夜、男のもとに首が訪れる。 身体はない。首だけだ。 首は男に焦がれ、逢いにくる…… 時代劇めいた語り口の怪異譚。 首の言葉の端々に宿る違和感。 首はどうして男を見初めたの…続きを読む

　主人公の先祖に酷い目に遭わされ、生首として祀られてしまった「ミシルシ様」。 　恨んで祟って……と、思いきや、没落した一族の最後の一人となっている主人公と、ほのぼの暮らしています…続きを読む

主人公は物語の始まりの時点でもすでに壮年といっていい年齢だ。 おそらくはその人生であったろう、さまざまな経験を胸のうちに収めて、すこし世の中と距離を置いた生活をしていたところ、幼い…続きを読む

物語は生首を持ち歩く主人公が、防波堤に座っている描写から始まる。 生首は自身が人魚であったことを告白する…… 魚の姿を失った人魚は、人魚と言えるのだろうか？ 生首はどうやらそれに…続きを読む

主人公はいったいどこから「迷宮」に迷い込んでいたのか？ 額縁に生首を見てしまったときか？ 骨董屋に入ったときか？ あるいは実家から出たときか？ はたまた…… どこまで行っても明確…続きを読む

突然、おかしな場所に紛れ込んだ主人公。 相棒は……生首！？ マスコットモンスターにしては頼りないその生首を連れて挑むのは「脱出ゲーム風世界」…… 唐突な展開に即座に順応する二人。…続きを読む

クールでインテリな闇仕事請負人である主人公の今回の仕事は、陽気な生首を保管し、日々指定されるミッションをこなしつつ三十日後に港へ届けること…… 舞台はどこかの町。何の変哲もないよ…続きを読む

　なにげない美しさ、さりげない幸福。 　そういう日常の綴られた連作集。 　おおきな事件は起こりません…というか、おおきな事件ですら日々の平穏さに飲み込まれ、くるまれて穏やかな時間と…続きを読む

きゃらきゃらと舌足らずな会話を交わしながら転げ回る生首 その生首を飼う女。 生首はかつての首切り貴族の犠牲者だと言うが…… 謎が謎を呼び、しかし曖昧模糊とした手触りを残して終わる…続きを読む

　物語は『帝王の首塚ドットコム』に主人公がアクセスすることから始まる。 　そこでは『バーチャルで首を作成し、飼える』。 　むかつくやつの首を作成して、自分が生殺与奪の権利を握る。 …続きを読む

　作者の深い教養と物語趣味に裏打ちされた生首の旅。 　なぜかとってつけたように関西弁をしゃべり始める生首の語りで始まる……というのもなかなか胡乱なのだが、そこから始まる『旅』も胡…続きを読む

人間には解決不能かもしれない難事件に遭遇し、手も足もでない迷えるひとの手足となって事件を解決する貝塚探偵！ 本人、手も足も「ない」けど！ 貝塚探偵事務所の構成員は、流れるように…続きを読む

徹夜バイト帰りの主人公、バイクに給油していて生首に出会う。 主人公はもちろん、目の前のおじさん生首が（写真撮られるときはキメ顔で）寝不足の頭がみせた幻覚だと思っている。 まあ面白…続きを読む

　短い作品群です。 　ホラーテイスト、民話テイスト、ほのぼの系、シュールテイストと語り口多種多様。 　どれをとっても新鮮ピチピチの生首！ 　語り芸の巧さを味わお勧め生首揃ってます…続きを読む

家出をして叔父さんのうちに転がり込んだ少年と、その叔父さんの物語 叔父さんはかつて、だれよりも美しく爪先で立ち、弓に反った背骨と優美で力強い指先で星を掴もうとして……掴めなかった…続きを読む

　戦いの場面そのものはすくなく、近隣の国々との火花散るような舌戦の場面もすくない。 　しかしながら小説の冒頭から結末まで、研ぎ澄まされた緊張が漲っている。 　国の意思決定を行う議論…続きを読む

　世界各地の神話や伝承のなかには、驚くほどの相似を見せるものがある。 　たとえば洪水伝説。 　あるいは楽園放逐。 　想像上の奇怪な生き物にも類似がある。 　それはひとつの「初源の伝…続きを読む

　2019年。あのときからいままで。 　まだ、過去ではない。けれど状況はどんどん変わっている。 「あのとき」の苛立ちや焦り、無力感、不安……それはもちろん疫病へのものもあれば、社会…続きを読む

古代中国の斉に『崔杼弑其君』（崔杼、其の君を弑す）という有名な逸話があり、これは中華世界における史官の覚悟のほどについての逸話なのですが、本作に登場するヒロインはまさに「そういう覚…続きを読む

主人公は「時代」を信じていたといえる。 たとえ「いま」がそうでなかったとしても、その時代が排除しようとしたものを憎み、時代に傷つけられても恨まず、「正しかった」とこころのどこかで信…続きを読む

本作の登場人物の活躍した時代は紀元前六世紀。 これは中華の歴史において「春秋時代」 殷周革命（太公望が活躍する『封神演義』の時代！）の紀元前千年代なかばと、統一秦の時代（『キング…続きを読む

　作者はちいさな心の動きを鮮やかに描き出すのが巧い。 　 　エリート武官に課せられた気の進まない任務。 　なにが気が進まないのか、自分はどうしたいのか。 　その描写は、彼が言ってみ…続きを読む

　統治者の死から、物語は始まる。 　「次」を見据えて胎動する諸侯、貴族たち。 　しかし彼らも、死した統治者も醜聞にまみれ、みずからの血筋を信じるあまりの振る舞いは読者にはいっそ、哀…続きを読む

　実はこの「晋」という国、馴染みのないように見えて、（おもに）宮城谷昌光氏によって、いろんな人物を中心に据えて小説化されている。 『重耳』『孟夏の太陽（趙盾含む趙家）』『沙中の回廊…続きを読む

　「良き君主」とはなんだろうか。 　おそらくは自分に正直では「良き君主」にはなれないだろう。 　ルイ六世の父親は、自身の好悪に正直であったが故に、失意のなかで亡くなっている。 　生…続きを読む