悲劇と、秘密と、復讐と

 ひとりの魔女が処刑される。

 物語はそう幕開け、しかし魔女の命は途切れることなく……ある兄妹と出会う。

 なぜ魔女は処刑されたのか、どこか描写に違和感がある王族とはなんなのか。
 そもそもなぜ魔女は首だけになって生きているのか。
 物語の味わいは章を追うごとに変化を遂げ、世界に潜む悪意が明かされる。

 それに抗う魔女の行動、そして兄妹のちいさな、けれど得がたい勇気。

 物語のおわりに、この世界が「過去」から解き放たれたことを読者は確信する。
 けれども未来は見えない。
 魔女は、過去を清算するために戦ったのだ。
 未来は、走り去った兄妹の足跡の先にある、そんな希望のある物語である。