本格的な変格ミステリ……などというと、言葉遊びのようだが、本気である。
姉の死を巡る謎に挑むのは妹。
その解決はとても本格派である。
ただし、変格であるのはそこにシャーマニズムが絡むからである。
叔父の犯した非道を償うために嫁ぐことになったふたりの姉妹
物語は姉の死の描写から始まり、その序章においてもおおきな手がかりがひとつ、提示されている。
視点が変わって妹の物語。遊牧民族の風習や生活が語られるなか、訳あって敵対する部族に嫁いできた彼女は、結婚そのものについては悲観していない。
また、姉と再会できることも楽しみにしている。
現代を生きる我々にとっては奇妙に思えることも、作者の丁寧な描写によって、「そのような民族」であるといつのまにか納得している。
そこには宗教、シャーマニズムも含まれており、その「人の口を借りて為される神の助言」もまた、自然なものとして物語に織り込まれてゆく。
ミステリとしては、この神の助言が饒舌過ぎるのではないかとも思えるのだが、さにあらず。
「正しい。けれどもそれを聴くのが人間であるが故に起こるブラフもある」という二重構造になっているのが見事。
まだ神話が力を持っていた世界・時代を背景にしたミステリとして秀逸な作品。
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立場ゆえに、敵対していた氏族の元へと嫁入りさせられる少女、ツェグナ。
彼女のわずかな希望は、嫁入り先の氏族で起こった悲劇、そして惨劇によって断ち切られました。
一見してファンタジックな舞台ですが、読み進めて行けば、現実の歴史における遊牧世界の厳しさをも実に詳細に、しっかりと描いています。
限られた水や牧草をめぐり、部族や氏族のあいだで争わねばならない苛酷な世界。
その自然からの恵みや啓示を請いねがい、怒りを避ける血のにじむ習慣や掟。
氏族を襲った連続殺人は、その舞台に密にからんだ仕掛けで。
そしてその動機は、そんな舞台を土壌として生まれた哀しいものでした。
そしてそれゆえに、肉親を失ったその真相を解き明かすため、自身を仇敵とさげすむ視線すら向ける氏族を救うため、謎に立ち向かう主人公の知恵、優しさ、そして強さが、話しが進むほどに美しく響きます。
作品と終章の題、そして最後の一語に籠められたその響き、どうぞ聞いてください。大いなる天と川とともに。
遊牧民が暮らすある場所。一人の女性が遺体で発見された。だが、この地域、日中に川に自ら入って死ぬと川の主を侮辱したこととなる。みずから入った=自殺なのか、他人に突き落とされた=他殺なのか、で部族は大きくもめる。
しかし、みなでもめている中、第二の遺体が発見される。その遺体は、道端に転がっていたのに、入水して死んだかのようだった…
世界観が遊牧民族をモデルにした世界という、ちょっと遠い世界ではありますが(私はほんとうにほんとうに大好きです!)、謎解き自体は遊牧民族のことを知らなくても与えられた情報で解くことができます。(また、遊牧民族の描写がリアルで細かいため、世界観にもどっぷり浸れます。)
ですが。
けっこうミステリのなぞ解きには腕に覚えがあるのですが、今回はほんとうにわからなかったです。最後の最後まで。こういう死に方だったのでは、と検討をつけても否定材料しか出てこないし、でも、この人しかいないよなあと思っても、容疑者候補からは外れてしまっていたり、そもそも容疑者候補といえない立場だったり。
矛盾と混乱の中、主人公の少女が提示した答えに、私は泣きました。
こんなに悲しい真相があっていいものか。胸がしぼられました。
少女とその伴侶が、幸福であることをねがってやみません。