遊牧民の暮らす草原で起きる、上質なファンタジックミステリー

遊牧民が暮らすある場所。一人の女性が遺体で発見された。だが、この地域、日中に川に自ら入って死ぬと川の主を侮辱したこととなる。みずから入った=自殺なのか、他人に突き落とされた=他殺なのか、で部族は大きくもめる。
しかし、みなでもめている中、第二の遺体が発見される。その遺体は、道端に転がっていたのに、入水して死んだかのようだった…

世界観が遊牧民族をモデルにした世界という、ちょっと遠い世界ではありますが(私はほんとうにほんとうに大好きです!)、謎解き自体は遊牧民族のことを知らなくても与えられた情報で解くことができます。(また、遊牧民族の描写がリアルで細かいため、世界観にもどっぷり浸れます。)

ですが。

けっこうミステリのなぞ解きには腕に覚えがあるのですが、今回はほんとうにわからなかったです。最後の最後まで。こういう死に方だったのでは、と検討をつけても否定材料しか出てこないし、でも、この人しかいないよなあと思っても、容疑者候補からは外れてしまっていたり、そもそも容疑者候補といえない立場だったり。

矛盾と混乱の中、主人公の少女が提示した答えに、私は泣きました。
こんなに悲しい真相があっていいものか。胸がしぼられました。

少女とその伴侶が、幸福であることをねがってやみません。