概要
《物語り》を名乗るその青年は、大森林の中で大海の孤島のように散在する村々を巡り、生きる為の知恵と知識を交換する。
少女がいた。
大森林とは無縁な、都の奴隷の身でありながら思わぬ運命の流転により《物語り》の青年と共に旅することになる。
旅の中、ふたりは出会いと別れを繰り返す。
両親を失い悩む少年、一見幸せそうに見えるが心に影を抱えた男性。そして人ならざる者たち。
ふたりとの出会いが彼らの心の結び目を解きほぐし変化をもたらす。
やがてふたりは、くたびれた商人を旅の仲間へ加え北へと足を運ぶ。
その地で見出すことになる、過酷な運命を知らずに。
少女や、青年に出会った人々の視点で描かれる放浪短編集。
この静かで心に響く旅の小編の数々を、ぜひお楽しみください
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!🌟精霊と人が交錯する大森林で紡がれる、優しくも切ない旅の記録🔥🌌
『精霊に愛された少女は《物語り》と共に果てなき森を歩む』は、青村司先生が描く旅と人の営みをテーマにした幻想的なファンタジーです!✨
物語の舞台は、広大な大森林。《物語り》を名乗る青年は、村々を巡りながら知恵と知識を交換し、 人々の営みを見届けながら旅を続けています🚶♂️🌿。
そんな彼と旅を共にすることになったのは、都の奴隷だった少女。彼女は思わぬ運命の流転により、《物語り》の青年と共に旅をすることになります✨。
旅の中で、ふたりは出会いと別れを繰り返します。両親を失い悩む少年、一見幸せそうに見えるが心に影を抱えた男性、そして人ならざる者たち――
彼らとの交流が、心の結び目を解きほぐ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人と獣と精霊が住まう、巨大な森林の旅へ。
果たして彼は何者なのか。どこまでも続くかのような大森林を旅するその男性は、素性が断片的にしか明かされていません。「物語り」という彼の役割は、集落から集落へと渡り歩くことで意味を持ち、ゆえに彼は旅を続けます。そこは、点在する集落と、凶暴にして自然の恵みである獣と、姿を見せない精霊への畏怖とが暮らす、俗と聖が入り混じる大森林。炎の精霊に選ばれた「祝り(はふり)」となった少女も旅路に加わりますが、その彼女をもってしても、彼は謎の存在です。森と同様に深まる謎。短いドラマの積み重ねが、この世界に深さと厚みを生み出し、読みやすいながらも広大な物語を構成しています。そして、優しく強く、ときにわがままやクセ…続きを読む
- ★★★ Excellent!!!人々の営みと過ちと選択を語り継ぐ
最近は見なくなりましたが、かつては旅人が点在する村を訪れて僅かな期間だけ交流して去る物語が数多くありました。本作はその系譜に属します。
そこで旅人は見ます。村の民は、動かぬが故に世界を知らず、温かくもあるが薄情でもあり、そして愚かさと欲が罪に繋がることもあるのだと。
村人は人間です。どうしようもなく人間です。人間という、どうしようもない存在なのです。
それを見届ける旅人は、彼らに同調してぶれては全体像が見えなくなります。冷静であると同時に冷徹で、広い意味において、裁きを下すことになります。
しかし人は生きていれば身体を固めて寝ていることはできません。村人は次に何をなすのか。それを見届…続きを読む - ★★★ Excellent!!!不思議な旅人のファンタジー.。本当に異世界を旅しているように感じました
まず最初に一言、独特なハイファンタジー作品です。
精霊や旅人をテーマにした、行く先々の出会いとストリーが魅力的な本作。
読みやすい文章と4話程度のショートの短編集のような作品で、飽きることなくサクサク読み進められます。
個人的には3話の「焔の少女」まで読むことをお勧めします。
精霊、国家など世界観がしっかり作られている中でのストーリーですので本当に旅をしているような気持ちになります。
宗教や風習が作り込まれているので、洋ファンタジーのように、実際に異世界の空気を感じる事が出来ました。
ただ、先ほども言いましたが、読みやすい文章と短編集の様な感じなので、重さを感じさせない素晴らしい…続きを読む - ★★★ Excellent!!!命を繋ぐ者、物語を語る者──運命が交差する時、世界が変わる
その村に"奇妙な旅人"が訪れる。
異なる色の瞳、くたびれた外套、背には二振りの剣。
《物語り》と名乗る男・タイカは、大森林の村々を巡り、知識と種を運ぶという。
彼の言葉に村は沸き、少年・イムナの心には"ある疑念"が芽生えた。
「僕の父母が残した種は、誰のものなんだ?」
夜の闇が迫る。静かな村の奥で、"何か"が目を覚ます。
精霊の残した影か、それとも滅びを運ぶ獣か。
この森で語られるのは、"ただの物語"ではない。
それは、失われた記憶と願い、そして"命の在り方"を問う物語。
過去と未来が交差する時、イムナは知る。
"見えないもの"の存在と、その優しさを。 - ★★★ Excellent!!!「世界は広い」その言葉と意味を伝えるために
「世界は広い」
そんなことは分かっていると言うかもしれない。
現代人は、確かに「分かって」いるのだろう。
本があり、映像があるからだ。
インターネットを開けば、世界のどこかで起こったことを知ることができる。
そんな情報のない「世界」で、その広さを感じることができるだろうか。
自給自足で終わる春夏秋冬。
行商人の伝える「別の村」の様子が、唯一の「そとの世界」。
それで構わない人だっているだろう。「ちいさな世界」に安らぎを覚える人もおおいことを、我々も知っている。
本作の登場人物は、どこかに「他者との違和感」を持っている。
なにかが違っていて、周囲と溶け込みづらく感じている人もいる。
疎外感…続きを読む