今っぽいタイトルに、内容はしっかり正統派ファンタジーで、まずそのギャップにやられました。
主人公は辺境伯家の三男、ギリアム。彼が訳ありの令嬢ニルダと運命的な出会いを果たし、物語が動いていきます。
ギリアムやニルダをはじめ、登場人物が皆それぞれに魅力的。困難にあっても前向きに進む姿を追いかけたくなります。知的でかっこよく美しく、でも完璧すぎず、人間味があって素敵です。
軽やかで明瞭な、スルスル読める文体でありつつ、世界設定などがとてもリアリティに溢れ、丁寧かつ細やかに練られています。そしてキャラクターの良さも相まって、物語の世界にどっぷり浸れます。まるで本当にこの国がどこかに存在して彼らが生活しているかのよう。
いまどきの気軽な読みやすさと、歴史ある正統派ファンタジーの懐かしい重厚さが合わさった、ワクワクが止まらない作品です。
いやもうほんまめっちゃおもろい…!
遊学からの帰途にある貴族の三男坊ギリアムと、日陰もの令嬢ニルダの、ボーイ・ミーツ・ガールから始まる物語。
主人公はギリアムで、ファンタジー活劇的な導入ですが、ニルダ視点だと、実家で冷遇(虐待)されている令嬢が、なんとか状況の改善を試みる中でギリアムと出会う……という、女性向け小説にもなりえるお話です。
不遇な二人は、お互いに降りかかる困難を、協力しながら解決していきます。ギリアムは熱くていいやつで、ニルダは物静かながら芯が強く、どこか色気を感じる女性。
そして、両者とも知的で、難しい状況でも前向きで、他者への思いやりを忘れない。
脇を彩るキャラたちも、みな人間味があって追いかけたくなります。
舞台はとっつきやすい近世から近代ヨーロッパ風の世界観なのですが、描写のたびに披露される細かい設定が、ひとつひとつ説得力や設定の広がりを感じるもので、歴史好きな人なども楽しめること間違いなしです。
二人の恋の行方、これからの領地の発展など、今後の展開が楽しみです!
タイトル的にもっと軽いノリのライトノベルを想像していたのですが、読み始めてびっくり! かなり練られた世界設定を持つ本格ファンタジーで、土台と大筋を見れば硬派な戦記物といった感じです。だからといって小難しい要素はなくて、読みはするする進む軽やかさ。
魔物がいたり、魔法のアイテムがあったりでファンタジー感はしっかりあるのに、世界観の芯が現実的なので異世界というより地続きのようなリアリティがあり、それが没入感に繋がってる印象です。
このゆるぎない土台の上で物語を彩る登場人物も魅力的で、主人公ギリアムと従者のデレクとの軽妙なやり取りはなんとも小粋だし、ヒロインのニルダとの関係もとても良い。何よりギリアムが本当に気持ちのいい男で、若者らしく衝動的な行動があるかと思えば、年長者の意見を聞き、今まで得た知識を活用して人知を尽くし、それから思い切りよく前に進むところが、もうなんともカッコいい。
こんな人だから、領民や出会う人に好感を持たれ支えられているというのも納得。読者も思わず惚れこむ、すごい人たらしです!
一度読んだら終わりじゃなく、あのシーンをもう一度見たいと読み直したくもなるので、書籍で手元に置きたいと思う作品。万人におすすめです!