隠したい秘密を、SNSで発信すること

主人公は長年、過食症であり、食べ吐きを繰り返している。
夫には隠しているその秘密を、彼女はSNSで発信している。

ありそうな状況である。家族に自分の状態を隠しているかは分からないながら、SNSにはメンタルの不調に起因しそうな自身の行動を書き込んでいると思しい内容は、たしかに見受けられる。

SNSは匿名だから。
たしかにそうだ。

しかし、なぜ「書き込むのか」の理由には、充分ではないだろう。

反応がほしいからか?
だが、本当に切羽詰まっているときにはそのSNSへの反応がどんなものだったとしても、否定されるのは当然のことながら、肯定されたとしても、同情されたとしても、忠告されたとしても、自分への「攻撃」に感じられるものだ。

それでも、書き込むのはなぜか。

本作は、一万字のなかで、その迷宮を歩むような行動の、ひとつの解を提示しているように思われる。