寂しいことも、嬉しいことも

 両親がおらず、おばあさんと一緒に暮らしていた主人公。
 おばあさんが入院してしまって、叔父さんと一緒に暮らすことに。

 未婚で子供なしの叔父さんが、とつぜん主人公(10歳女子)を引き取って、どう接すればいいのかまごついていることも、主人公はちゃんと見ている。
 その叔父さんが彼女のためにと(自分のためでもあるだろう)設定した「文通相手の権兵衛さん」に手紙を書くことで、自分の寂しい気持ちや戸惑いも言葉にして、ひとつひとつ、整理していく。
 その行間に浮かび上がる主人公を見守る目の優しさに、精一杯、背伸びしている主人公の健気さに、じわじわ、うるうる来ること間違いなしの本作。

 ラストシーン、晴れ着姿で写真に納まる叔父さんと主人公の表情が幾通りも浮かんできてそのどれもが似合っている、まさにラブリーな作品です。