概要
そんなある日のこと、雲隆が突如暗殺される。首謀者として挙げられたのは夜隆だった。夜隆は大君の座を欲していたという根も葉もない噂を立てられ、獄中につながれてしまう。月隆の温情でかろうじて命は救われたが、都からは追放。夜隆の苦難の日々が始まった。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!どん底からの逆転劇
甘ったれ主人公がどん底に落ちるところから始まります。最初はもうちょっとシャキッとしないさいよと思って読んでいましたが、タイトルに〝海上で万難を排して帰還する事〟とあるように、「これはしんどい……」という目にも遭い……。
でもこの主人公、一難去った後もなんだかへらっとしているのですよね。それを〝何も持たぬ美しい少年〟が刺してくれるので、「あんたシャキッとしなさいよ!」というストレスはあまり感じずに読むことができます。
むしろいつの間にか謎の親心のようなものも芽生え、〝万難を排して帰還する〟頃には「立派になったねぇ……」と不思議な感動がありました。
ちなみにこちらの作品に出てくる地名や人名、某…続きを読む - ★★★ Excellent!!!失ったからこそ、大事な仲間がその手に残った。いまこそ再起のとき!
主人公の狩野夜隆は、大君と呼ばれる王族の狩野雲隆の三男。
武術の才に恵まれていますが、なにより皆から大事に大事に育てられました。
そんなある日、御父上の雲隆が逝去。あとを継いだ長男も落馬により身体が動かせぬ身となります。
夜隆の運命はここから大きく変わります。
タイトルをご覧ください。
〝澎湃〟とは、水が逆巻くさまを表しているのだそうです。まさにこの逆巻く水の上の木の葉のごとく夜隆は翻弄されます。
最初に申し上げましょう。
夜隆の最初の困難は非常につらい。ほんと、非常につらいけど……。
そこから彼はつかみ取るんです。
お坊さんと美少年と海賊を!!!!
(……何言ってんだこいつ、とお…続きを読む - ★★★ Excellent!!!磨かれた刃の切っ先を、彼はどこに向けるのか
逃れられない「分(ぶん)」、というのがある。
いきものとして持つ限界……「分」もある。人間は空を飛べない、といったようなことだ。
「身分」は、生まれながらにして定められたものだが、いきものとしての限界ではなく人間の決めた垣根だ。
なにものかによって統べられる「国」というものがある。
人があつまりかたちづくられたそこでは、ひとりひとりが思う方向に進んでいながら、全体としてどこかに向かっている。
民が生みだし、臣下が構え、王がその構えた刃の方向を決める。
身分の垣根が低ければ、民が王になるための努力をしても無駄ではないが、垣根が高ければ、民は王になれず、王は民になれない。
そし…続きを読む