どん底からの逆転劇

甘ったれ主人公がどん底に落ちるところから始まります。最初はもうちょっとシャキッとしないさいよと思って読んでいましたが、タイトルに〝海上で万難を排して帰還する事〟とあるように、「これはしんどい……」という目にも遭い……。
でもこの主人公、一難去った後もなんだかへらっとしているのですよね。それを〝何も持たぬ美しい少年〟が刺してくれるので、「あんたシャキッとしなさいよ!」というストレスはあまり感じずに読むことができます。
むしろいつの間にか謎の親心のようなものも芽生え、〝万難を排して帰還する〟頃には「立派になったねぇ……」と不思議な感動がありました。

ちなみにこちらの作品に出てくる地名や人名、某県に縁があると序盤から「もしや?」となります。(念の為作者様の近況ノート確認してみたら合ってました)
なので途中から新しい名称が出てくるたびに「これはあれかな?」と考える遊びができて楽しかったです。

人を疑うことなくぬくぬくと生きてきた主人公が、苦難を通して立ち上がる物語――是非お楽しみください。

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