選ばれた女性が神に嫁ぎ、神の肉を食べて死ぬ。それは皇国において、数々の祭事の中でも特に重要とされている儀式だった。食べられた神は花嫁の死後に生き返り、また新たに選ばれた花嫁に食べられる。
そんな「神喰いの花嫁」に選ばれた少女たちは、どんな選択をするのか。何がその選択をさせたのか。異なる四人の人生を描いたオムニバス。
ほの暗い空気感なのですが、不思議と不幸な感じはしませんでした。それはきっと、花嫁に選ばれた少女たちが、最後に自分の欲しいものを手に入れたように見えたからなのだと思います。
花嫁に選ばれた少女たちは今まで歩んできた人生によって、それぞれ違った価値観をもっています。少女たちがどんな経験をし、どういう思考をし、どう行動するのか。そういったことが丁寧に描かれているため、私も彼女たちの選択を理解することができたし、その選択は彼女たちにとって正解なのだと思うことができました。
また、少女たちだけでなく、情景や服装、食事等の描写もとても丁寧で、美しさや上品さを感じました。どんなに魅力的かを本当はもっと語りたいのですが、この感覚を客観的に表す言葉を自分は持っておらず……もどかしいです!
ぜひ、数々の魅力を実際に読んで肌で感じていただきたい作品です!
(※第三章「給餌」までを読んでのレビューです)
対となる作品、「少女は宴の夜に死ぬ」もオススメです。こちらでは少女が食べられます。
章ごとに主人公の変わるオムニバス形式のこの作品。全ての章に共通しているのは、主人公の少女達が〝神食いの花嫁〟に選ばれるということ。
まずこの〝神食いの花嫁〟が神様を食べるということだからだと思いますが、作中に出てくる食べ物の描写が主人公の心理描写と同じくらい詳細です。個人的に馴染みのない食べ物もありますが、それでも美味しそうだと思えてしまうくらいしっかりと描かれています。
正直ちょっとした飯テロです(この作品の雰囲気を考えるともうちょっとお上品な言葉で表現したいところですが、言い換えが思いつかないのでこのままで……)
そんな食べ物に対して、少女達が抱く感想も様々です。
ある少女は何も感じなかったり、ある少女はとても満足したり。それが育った環境の全く異なる少女達の価値観を表しているようにも思えます。
〝神食いの花嫁〟に選ばれた少女達が何を思い、どんな気持ちで神に嫁いでいくのか――繊細で美しい描写と共に描き出されている作品です。