殿様に一番大事なこと
- ★★★ Excellent!!!
あらすじにあるとおり、主人公夜隆は要領の良さと剣の腕だけを取り得に能天気な人生を過ごしていた結果、兄を暗殺した疑惑を掛けられ全てを失った上に、人の疑い方を知らない所為でそれに輪を掛けて悲惨な目に遭い、遂にはあわや奴隷生活が始まるかと思われた……。
まず、この序盤から夜隆が立ち直り刀を取るに至るまでの、物語の相方夢之助とのやり取りを軸にした丁寧な描写が凄く良い。一度折れた人はそう簡単に立ち上がれないが、夜隆がこの国の統治者一族の一人である限り、尚も這ってでも進まなければならないのだと強く印象付けられる。
ではここまで落ちぶれた夜隆に尚も冷たく当たる夢之助の失望は何処から来ているのか?それが明らかになるシーンが、この物語の核に近いのではないか。能天気な人生を送っていた夜隆にとっては何気ない行動だったが、それが願ってもいない救いの手かに思えてしまう人生を送る者がいた。一人や二人ではない。
それを知った夜隆は一気に追い風が吹くように突き進んでいくことになるが、話の決着は夜隆お得意の刀でつけるのではない。結局、この物語において国が荒れた際に統治者に必要なものは何だったのか。それが結末になる大団円物語なので、是非読んでほしい。