孤独な青年の繊細な心の移り変わりを、丁寧な筆致で描き出していく

主人公(受け)のリィエンは半分虎の獣人として生まれたために、生まれ故郷にいられなくなって辺鄙な寒村で孤独な暮らしをしていました。その慎ましいと言うにはあまりにも寒々しい暮らしと、その暮らしで擦り切れた彼の心の痛ましさに、最初は心配しどおしでした。
そんな彼のふところに、するりと入ってくるクアン(攻め)。彼も大きな隠し事をしているようですが、リィエンとクアンの生活はなんとなく微笑ましくて、リィエンの頑なだった心が癒えていく過程にはほろりときました。
生まれ故郷では、虎は薬にされてしまうと刷り込まれてきたようですが、終盤「剥製にされてもいい」と言い出した時にはもう涙をこらえきれませんでした。切ないねえ。
モフモフ要員の豆鹿のマイちゃんも最後の最後に大きな役割を果たして、おおっ!となりました。食っちまえ、なんて言ってごめんね、マイちゃん。野蛮なのは虎の子のリィエンではなく読者の私でした。