孤虎は今宵、黄花の国で愛に鳴く
藤乃 早雪
プロローグ
いつかの記憶
「いい? リィエン、その姿を人に見せたら駄目よ」
――うん。分かってるよ、母さん。
黄土色の毛を優しい手つきで撫でられて、リィエンは喉を鳴らす。
もう夢でしか会うことのできない人だ。長らく会えなかった分、リィエンは腹を見せ、幼獣のように目一杯甘えた。
「正体がバレたら大変なことになるからね」
――大人は薬にするために解体され、子どもは丸ごと酒漬けにされる。そうでしょ?
子どもの頃から何度も、口酸っぱく言われてきたことだ。忘れるはずがない。
「もし、この人のためなら死ねるという人が現れたのなら、その時は正体を明かしなさい。母さん、後悔していないのよ」
夢に現れた母親は手を止めて、虎の姿をした息子に微笑みかける。
母親が決まって最後に告げる言葉だけ、リィエンはいつまで経っても理解できなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます