強く生きれない男と、強く生きる女二人

できることなら、彼女と一生を添い遂げるべく、いつまでもベルリンに留まっていたかった。

時は日露戦争前。
公使館からの命令より、恋人エデルと別れ、急遽帰国することになった祥三郎。
危険なロシア帝国を横断し、地元鹿児島まで戻ると、そこにいたのはすでに婚約を断った相手・晴子だった。

かつて役立たずと言われて来た祥三郎の居場所は、軍楽隊にしかなかった。だがそこは、今では彼を死地へ追い込む所へと変わっていく。

「僕にとって音楽は、生きるための希望なんです」

かつてエデルにそう語った祥三郎。
そんな彼が戦場で出会ったのは――なんと、エデルだった。

「祥三郎。君が生きてベルリンに帰るという約束──私が必ず守らせる」

祥三郎が想像していた以上に恐ろしい戦場で、一騎当千の活躍を見せる戦乙女(ワルキューレ)・エデル。
そして晴子もまた、「先見」の能力を持って、祥三郎のもとへやって来たのだった。

「祥三郎様は死にもはん」

婚約を続行する父親に逆らうことも出来ず、晴子を強く突き放すことも出来ない祥三郎。そんな彼の前で、捨て身で戦うエデル。
晴子とエデル。二人の女性の関係と、彼の運命はいかに。

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