サクラマイチルヨ

鬼のアイカは高校生活を送る中で恋をし、お互い惹かれあう。
しかし、二人には決して愛し合ってはいけない宿命があった。
なぜなら鬼と人間だったから。
鬼は人を8年ごとに食わなければ生きられない。

桜舞い散る満月の夜。
それは悲しい決断の時であった。

ダークなストーリーながら巧みな文章に魅せられます。

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（138文字）

短編であることが勿体無いと思うほどに、奥深い良質な作品です。

八年ごとに人を食べて生きている、鬼。
残酷なように思いますが、人間も他の生き物の命をもらって生きているので、文句を言えないのかもしれません。
ですが当然の成り行きとして、人間は鬼を憎み、鬼討師という組織ができます。
鬼であるアイカは、鬼討師に優しい両親を殺されます。
そしてなんの因果なのか、成長したアイカが好きになったのは、鬼討師の少年。両親を殺した鬼討師の息子でもあります。

ドロドロしたストーリーのようですが、思いの外アイカがさっぱりとした性格なので、読んでいて重苦しい感じがありません。
もしかしたらアイカは自分の運命、生き…続きを読む

美しく儚い世界観に惹きこまれます。
家族が討たれた鬼の少女と、
家族が喰われた鬼討師との対決。

知り合いになり、惹かれ合い、それでも殺さなければならない。

アイカがもし人間であれば、どれほどよかったことでしょう。
抑えられた情感の裏を深く味わえる作品です。

作者様の作品への想いが詰まった一作。
鬼の性。色々とテーマが深く考えさせられる作品でした。
深いです。

親の仇と思うもの。

人の世界に身をおきながら、常に尖りて敵を打つ。

鬼の運命を背負いて。

子の運命を背負いて。

いつかはくる、食らわなければならぬとき。

文体はライト文芸寄りで読みやすくなっております。

是非、ご一読ください。

そこは現代社会に鬼が存在していて、人を襲っている世界。鬼の少女は人への憎しみを抱えながら、人との恋に翻弄される。愛と憎しみ、そして続く報復の連鎖。未来は明るくないのかもしれない。しかし、この作品を彩る魅了的なキャラクターと作り込まれた設定は私を惹きつけ続ける!! とにかくこの世界の未来を、続きを見てみたい!!

人を喰らわねば生きていけない鬼の一族と、その鬼を狩る一族。
設定だけ聞くとまるで某人気漫画のようですが、彼方が少年漫画として成立させるために拾わなかったであろう、要素もバッチリ拾っています。というかそれがメインです。
青春・葛藤・成長・意思疎通はできるのに絶対に相容れない異種間の恋愛。
これらの要素をこれだけの短編できっちりまとめ上げている筆者氏の力量に脱帽です。
伝奇小説でもあり、青春小説でもあり、恋愛小説でもある本作。是非おすすめです。

最近、あまりお目にかかれなかった気がします伝奇モノ。
美しくて、でも時に苛酷で、そして儚く。耽美で。久しく読んでいなかった、そんな物語に出会えた気がします。

鬼には人の肉を喰わないといけない年齢がある。それが「喰齢（クイノトシ）」

その喰齢に翻弄される少女と少年、そして少女の物語。

喰う鬼。
狩る鬼討師との、儚すぎる運命に翻弄されながらのラスト。背筋が寒くなりながら、どうしてか。美しさを感じてしまうのが、この物語の魅力でしょう。

桜舞い散る美しさは、ある意味では選択したら戻れない、青春の残酷さに似ている気がします。

鬼の少女、アイカは父親を鬼討ちの一族に殺される。
その後、成長した彼女が出会ったのは、父親を殺した鬼討ちの息子、燐。

彼女を鬼と知らずに付き合ってしまった燐の戸惑い、その後のバトル、さらには彼の妹・董子に見せるアイカの執着と、鬼と鬼討ち一族の、尽きぬ悲しみと情念が物語をつないでいきます。

透き通った悲しみ、とでもいうのでしょうか。
両者ともに救いを求めているはずなのに、絶対に相容れない。
どうかこの美しくも残酷な世界に足を踏み入れてみてください。
きっとあなたも虜になってしまうはずです。