人間ドラマ、現代医療、ホラーオカルト!葛藤と成長に心打たれるお仕事小説

医大を卒業して三年目の若手医師・一叶。彼女は母親に言われるまま病理科への配属希望を出したのだが、霊病科に配属されることになってしまう。困惑する彼女だったが、一方で、母親に決められた人生からはみ出すチャンスであるとも感じるのだった。
霊によって引き起こされた病を診る診療科・霊病科。各メンバーたちは患者だけでなく、自分自身や仲間たちとも向き合い、医者としても人間としても成長していく。

医療モノ、ホラーオカルト、人間ドラマ、真相に迫っていくミステリーの雰囲気もある、とっても盛りだくさんな作品です!

○医療モノ
 検査・診断・治療といった「いかにも医者っぽい」描写から、カンファレンス等の「医者の日常」的な描写まで、幅広く描かれています。随所から専門性を感じ、お仕事モノとしても読んでいてとても楽しいです!

○ホラーオカルト
 ジャパニーズ的なものから人怖系、霊視や念写といったオカルト感のあるものまで、こちらも幅広く描かれています。怖い・悍ましい・後味が悪い・気持ち悪い・人が怖い等々、様々なホラーらしさを味わうことができます。
 こちらの作品は医療モノでもあるので、人怖を「理解できない異常なもの」ではなく、医者として理解しよう・病気として捉えようというアプローチがなされています。超常現象は超常現象、病気は病気として受け入れるストーリー・設定がとても魅力的です!

○人間ドラマ
 登場するキャラたちはみんな何かを抱えています。その葛藤自体がドラマですし、仲間や患者と接することで自分自身とも向き合い、それぞれが成長していく様にもすごく心を揺さぶられます!
 医者として身体を診るだけでなく、相手の精神や心、その背景にまで目を向け、さらにはそれらを冷静にも感情的にも受け止める本作は、人間丸ごとを描き出しているように思いました。その多角的な視点に読んでいて夢中になりましたし、人間らしさへの肯定を感じました。

○他にも盛りだくさんのエンタメ性
 キャラたちがそれぞれ違った個性を持っていて、それの活きたセリフや行動、関わり合いをするのが楽しいです。最初からたくさんのキャラが登場する上、あだ名で呼ばれたりもするのですが、誰が誰なのか覚えられないということもありませんでした!
 メインキャラの事情を知っていったり、患者の霊病の原因を突き止めたりする過程には、真実に迫っていくワクワクがあります。作者様の情報の出し方が巧みで、先が気になってグイグイ読めましたし、自分なりの予想をする楽しさもありました。

長々書きましたが、一言でいうと私にぶっ刺さりました。それはもう、ぐっさり刺さりました。
もっともっとたくさんの方に読まれてほしい作品です!

※「3章 呪いと共に⑧」までを読んでのレビューです。