概要
「死にたい」から始まり「生きたい」で終わる。夢見し蟲たちの蠢動の物語
カクヨムweb小説短編賞2022及び、カクヨムコン8にて短編特別賞を受賞することができました。本作をお目に留めてくださった皆様、温かいお言葉で応援してくださった皆様、そして選考に携わってくださった皆様。全ての方々に、心より御礼申し上げます。
──────────
とある屋敷に、自殺を繰り返す虫嫌いの少女がいた。政略結婚のためだけに産んだと云い聞かされて育ち、外にも出されず、白い部屋で着飾って生かされるだけの己の生に絶望した少女は〝死〟に希望を見出し、自殺を繰り返すようになる。
そんな少女の前に一人の男が現れる。彼は少女の兄の奴隷として売り飛ばされてきた男だった。男はたびたび少女の自殺を阻止し、屋敷中の人々に見放された少女の世話を焼く唯一の人間となる。
これは、死と生。「死にたい」
──────────
とある屋敷に、自殺を繰り返す虫嫌いの少女がいた。政略結婚のためだけに産んだと云い聞かされて育ち、外にも出されず、白い部屋で着飾って生かされるだけの己の生に絶望した少女は〝死〟に希望を見出し、自殺を繰り返すようになる。
そんな少女の前に一人の男が現れる。彼は少女の兄の奴隷として売り飛ばされてきた男だった。男はたびたび少女の自殺を阻止し、屋敷中の人々に見放された少女の世話を焼く唯一の人間となる。
これは、死と生。「死にたい」
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!夢見し蝶たちの遺言、生と死の狭間で見つけた希望の物語
「死にたい」から「生きたい」へと至る過程を描くこの物語は、私たちが直面する生の苦悩と死の恐怖を見事に描き出している。
物語は、死を望む心の叫びから始まり、生への渇望へと至る。この変遷は、ただ単に生きることの意味を問うだけでなく、人間の内なる葛藤と成長の過程を深く掘り下げている。
この小説は、一見すると虚無感に満ちた人生からの脱出を試みる若い女性の物語に過ぎないように思えるかもしれない。しかし、その背後には、人間の存在そのものの意義と、絶望の中でさえ見出される希望の光が描かれている。
登場人物たちは、自己の存在を否定され、愛されることのない孤独な生を送る。だが、彼らはそれでもなお、生きる…続きを読む - ★★★ Excellent!!!少女は生き様を、男は死に様を蟲と喩えた。脆く鮮明な遺言が導くは——。
褒め言葉の間に縫い付けられる『死にたい』から始まる純文学短編。生と死を儚き虫に喩えつつ、死にたがりの少女と生き急ぐ男の物語が綴られていく、読後感の良い作品です。
ネット小説が普及する昨今『死生観』をテーマに扱う作品は、注目されつつあります。その中で『夢見し蝶の遺言』は、繰り返し読み返すのに適している印象を受けました。純文学は読み手と書き手の感性を研ぎ澄ます分野である為、自由に発信する事が可能な舞台では見逃されがちな傾向があります。しかしこちらは、丁寧なリータビリティで台詞と地の文のバランスが程良く、万人向けに相応しい作りでした。だから当方は三回も読み返したのでしょう。
カクヨムの性質上、…続きを読む