少女は生き様を、男は死に様を蟲と喩えた。脆く鮮明な遺言が導くは——。
- ★★★ Excellent!!!
褒め言葉の間に縫い付けられる『死にたい』から始まる純文学短編。生と死を儚き虫に喩えつつ、死にたがりの少女と生き急ぐ男の物語が綴られていく、読後感の良い作品です。
ネット小説が普及する昨今『死生観』をテーマに扱う作品は、注目されつつあります。その中で『夢見し蝶の遺言』は、繰り返し読み返すのに適している印象を受けました。純文学は読み手と書き手の感性を研ぎ澄ます分野である為、自由に発信する事が可能な舞台では見逃されがちな傾向があります。しかしこちらは、丁寧なリータビリティで台詞と地の文のバランスが程良く、万人向けに相応しい作りでした。だから当方は三回も読み返したのでしょう。
カクヨムの性質上、読者を限定してしまうという点と、どの層の目にも触れる機会はあるので難解漢字のルビ振りは一考するべき課題がありますが、web短編小説のエンタメとして、純文学はこうで在るべきだろうと思わせる力作です。