概要
叶わぬ想いとともにそっと胸に閉じこめていた、その名前――
ある朝。いつものように広げた新聞の『お悔やみ欄』に、懐かしい名前をみつけた独り暮らしの小説家。それはかつて恋い焦がれ、しかし決して想いが叶うことはないと、胸に秘めていた人の名前だった。
墓参りをした帰り道、偶々通った公園で犬猫の譲渡会をやっているのを見かける。にゃあと鳴かれ、小説家は気に入られましたねと勧められるまま、その白猫を引き取ろうとしたが――。
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オムニバス短篇集〈 ❦ 10 Love Songs and Stories -君を想いて-〉の、五話めの物語です。
短篇集収録時は二分割だったものを、こちらでは読みやすいように1エピソードあたりだいたい2,000文字前後と、五分割にしました。内容はまったく変わっていません。
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墓参りをした帰り道、偶々通った公園で犬猫の譲渡会をやっているのを見かける。にゃあと鳴かれ、小説家は気に入られましたねと勧められるまま、その白猫を引き取ろうとしたが――。
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オムニバス短篇集〈 ❦ 10 Love Songs and Stories -君を想いて-〉の、五話めの物語です。
短篇集収録時は二分割だったものを、こちらでは読みやすいように1エピソードあたりだいたい2,000文字前後と、五分割にしました。内容はまったく変わっていません。
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おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!主人公が人生の終盤で見つけた幸せのかたち
レビューに私事を書くのも何なのですが、私自身主人公と同様にFtMトランスジェンダーです。私の場合はバイセクシャルでパートナーもいますので、状況は異なるのですが。
そのこともあって主人公にどーんと感情移入してしまい、一話目から涙。
誰にも言わずに生きてきたなんて……主人公と同年代の方のなかには(もちろん同年代でなくても)そういう方も大勢いらっしゃるとは思うのですが、想像するだにつらい。つらすぎる。
でも、だからこそ中盤からの展開が輝くのです。胸に沁みるのです。
ストーリーも文章も非常に美しく、哀しく切ないけれども救いと希望をくれる。
カクヨムで大好きな作品がまたひとつ増えました! - ★★★ Excellent!!!<私>を呼んだのは、忘れられない名前の……
時代がそれを許さなかった。
振袖を着せられても月並みの本意ならぬ妥協はできなかった。己を偽る苦しみは想いを伝えられない哀しみに勝るのだろうか。もしくは同等の無念なのか。
人生の晩秋を迎えた主人公<私>の凍てついた想いが熱い涙にとける時。
偶然の出逢いが奇跡を呼んだ。
あの眩しい季節、共に青春の息吹を分かち合った愛しい人の名前が……。
何度も読ませていただいた。
その度に<私>と想いがシンクロする場面に涙する自分がいる。
<私>の境地そのままの抑制の効いた静謐な描写と洗練された文章が最高級の楽曲を思わせる優美な旋律を奏で、すうっと読み手の魂に沁み入ってカタルシスをもたらす。
これが作者の真骨…続きを読む