企業勤めで疲れた人々が、ちょっと休憩と立ち寄って座った公園のベンチで不思議な体験をしていくお話です。それぞれの視点で語られていく構成も良いですし、短編で読みやすいので是非読んでもらいたい作品です。会社勤で似たような経験を持っている人の心には余計に染みるはずです。私は、染みました。……どなたか、このベンチどこにあるか教えてくれませんかね?
昔から「すまじきものは宮仕え」などと言われるように、会社や役所の勤務というものは心身をすり減らします。だがしかし!ここに一服の清涼剤あり。疲れたら、いえ、疲れてなくても、一読すれば、アーラ不思議。スーッと楽になります。
人間は自分に見えるものが全てだと感じるもの。でも数歩横にズレれば見える景色は変わるもの。あなたの目が見ているものは、あなたの隣の人が見ているものと同じですか?それとも違いますか?違っていても良い。人間はきっかけがあれば分かり合えるから。
人はそれぞれ抱えているものがあるが、何を抱えているのかは本人にしかわからないことが多い。 そして、抱えているものによって、同じものを見ていても見え方が変わってくる。 同じベンチから見上げた空が違って見えるのは、季節や雲の形の違いだけではないのだろう。
社会人になると、だれもが自分の役を与えられる。平社員には平社員の、中堅には中堅の、上司には上司の役柄が割り振られている。解釈はそれぞれにゆだねられているけれど、その役になったら、その役らしく振る舞わないといけない。善いとか悪いではなくて、やらなければならない。いつの間にか、表と裏の顔ができてしまう。なんだか、ちょっと息苦しい。でもひょっとしたら。苦手なあの人も、役をまっとうしてるだけなのかもな。そう考えると、ふっと力が抜ける。私の嫌いなあの上司は、空になにを見るんだろうか。とてもゆるやかで、どこか暖かい小説です。
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