本当に本気で自由に生きようと思えば、恐らくできます。しかし、実際問題としてそれはできない。何故なら生きなければならない。家族を養わねばならない。となると働かねばならない。となると……。社会のルールに、自分達の生活を合わせなければならないから。閉塞感が漂う窮屈な社会で、それでも。じゃあせめて。儚く、切なく、淡い。暗くネガティブな文章の所々に散りばめられた、桜の花びらのような「綺麗さ」が、読む人の心を打つのだと思います。私は打たれました。
不況による失職、住み慣れた家からの引っ越し。人生が大きく変わってしまう身近な大事件を描きながら、お互いを想い、寄り添う夫婦の姿がとても愛おしいです。桜の監獄の様子が美しく、読み終わると自分も主人公達と同じ場所にいる感覚になります。季節を問わず、いつまでも瞼に桜の花びらが残ります。おすすめです。ぜひご一読ください。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(279文字)
映画的だけど、写真をみているようで、かといって動きがないわけじゃない。珈琲と桜。小道具が粋で生きてる。登場人物もよいかんじの距離感で、不穏な監獄というワードを不穏じゃないものに。何度か噛み締めて拝読しました。
日本人が大好きな桜。その花に「監獄」という恐ろしい単語を繋げるなんて、とても衝撃的でした。何と素晴らしいセンス。この感性が羨ましいです!桜吹雪のシーンがとても美しかったです。夜に舞うピンクを想像して、楽しかったです。だけどその美しいシーンにも、この世界で生きていくことへの切なさが感じられます。少し悲しいけれど、どこか愛おしい余韻が残る物語だと思いました。
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