本作を読み始めた人は、最初に、今まで見たことがない風景描写に揺さぶられるでしょう。
本来の意味が薄れた「ファンタジー」や、気楽にいける「異世界」ではなく、一面の、砂、砂、砂……
その舞台に紡がれる人々の情景も、あまりに辛い現実に、とうの昔に乾ききっています。
物語を噛み締めるほどに、砂が読者の歯を削っていくが如くに厳しい感覚に襲われます。
しかし運命に導かれた二人の出会いから、世界がまだ生きていることを見せ始めます。
登場人物な皆きちんと強い個性を持ち、信条と心情が明かされるにつれ魅力を放ち始めます。彼らが縒り合わさって繋がる物語は味わい深いものとなっていきます。
フィクションがフィクションであるが故の美味を湛えています。
楽ではありません。それでも。この世界に飛び込みましょう。
主人公とヒロインのデコボココンビ。商人の師弟(?)であり、健康器具(!)であり、お互いにとってかけがえのない大切な相手。
過去の柵や、家庭の柵、大切な人の死、因縁の仇敵。
様々な問題を、逃げること無く真っ向から立ち向かい、解決を目指してふたりは旅をします。
ぶっきらぼうなイクサと、すこぶるポジディブで可愛らしいリェリィ。
全く異なるタイプのふたりは、お互いに影響し合い、少しずつ、変わっていきます。
『あの』シーンは必見です。ここでは言えません。
あと、バトルシーンも必見です。スピード感があって、熱中してしまいますよ。
主人公最強。確かに戦闘力という面で言えば、イクサは最強です。
『紡流(ほうる)』という、この世界の人々なら誰しも持つ力があります。それは、砂を操るというもの。大小強弱があり、イクサは『最大最強』の紡流を持っています。
そんな彼は17歳。
そして、戦争を経験してきた戦士でもあります。なんと6年前。11歳の時に、その才能を使って戦地に赴き。
『砂上の戦神』の異名を付けられるに至りました。
彼の内面はどうでしょう。
強い紡流の才能に溺れることはなく。嬉々として敵を殺すことはなく。淡々と冷静に戦う性格をしています。
『人を殺すことを、戦争だから、などと言い訳せず、仕方ないで済ませない』
『その悪と罪を背負いながら生きてきた』
という、彼の哲学があります。
彼はその、無限だと表現される紡流の弊害で、常に頭痛に苛まれていました。
戦争が終わり。彼は商人として生計を立てていました。
そこへ現れたのが、ヒロインリェリィ。
彼女はなんと、紡流を持たないどころか、相手の紡流を吸い取ってしまうという希少な体質がありました。
この世界で紡流が無いというのは、とても不便で、吸い取るというのは忌み嫌われます。
また、彼女の出自にも複雑なことがあって……。
無限の紡流に悩まされるイクサと、紡流を吸い取るリェリィ。このふたりの出会いから、物語は始まります。
それは砂の強い日でした。
砂上ファンタジーです。
紡流の設定など詳細に練ってあります。
キャラ、かっこいいです。
かつて砂上の戦神と呼ばれていたイクサ。かっこいいです。
そして、すごい武器をコートに隠し持ってます。その武器の名は、“砂喰い虫”。特殊な武器で、その設定も面白いです。
リェリィ、かわいい。僕っ子です。すごい能力持ってますが、その能力のせいで異端扱いされちゃってます。
イクサの能力との相性はよく、二人はいいコンビです。
かっこいいアクション。
砂を駆使した戦法が熱いです。
商売小説の側面もけっこうあります。商売についての考えも面白いです。
敵キャラも濃いです。
壮大なファンタジーをぜひ!
今ココに書く文章は、書評なのか、それとも感想文なのかは分かりません。
一言、「面白い」と書けば良いだけなのかもしれませんが、それはこの作品を読んだ他の人「たち」にお任せします。
この作品の世界には、この作品にしかないコトバが、いくつか出てきます。そして、そのコトバ達の一つでも欠けたなら、この作品は成し得ない。
そう感じます。
他の要素も同様です。
主役のイクサとリェリィは、勿論ですが、それ以外の人物。ちょっと因縁つけてきて返り討ちに遭うだけの、「モブ中のモブ」。そんな人達も重要な要素です。
そして、因縁の相手との戦闘。
それに至るまでの経緯。
決着までの戦いの流れ。
その後の感動的な……!
etc……etc……。
枚挙に暇がありません。
第一【巻】で、これだけ魅せてくれるのです。
【第二巻】にも期待しましょう。
EXCELLENT ✖️……わからない(皆さんはどう?)(笑)(まぁ良いじゃん)。