砂を噛むような、味わい深いフィクション

本作を読み始めた人は、最初に、今まで見たことがない風景描写に揺さぶられるでしょう。

本来の意味が薄れた「ファンタジー」や、気楽にいける「異世界」ではなく、一面の、砂、砂、砂……

その舞台に紡がれる人々の情景も、あまりに辛い現実に、とうの昔に乾ききっています。

物語を噛み締めるほどに、砂が読者の歯を削っていくが如くに厳しい感覚に襲われます。

しかし運命に導かれた二人の出会いから、世界がまだ生きていることを見せ始めます。

登場人物な皆きちんと強い個性を持ち、信条と心情が明かされるにつれ魅力を放ち始めます。彼らが縒り合わさって繋がる物語は味わい深いものとなっていきます。

フィクションがフィクションであるが故の美味を湛えています。

楽ではありません。それでも。この世界に飛び込みましょう。

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