おとなしめ男子と明るいギャルのバディが、ボルダリングペアで様々なライバルたちと競うスポーツラブコメ。
さまざまなライバルが登場し、熱い戦いが繰り広げられます。
青春スポーツものとしての面白さがここに。
さらに、二人がいくつもの障がいを乗り越えて、互いを理解し信頼し、素敵な関係に成っていくところも見どころでした。
劇中人物それぞれの一人称視点で展開される群像劇なのですが、メイン二人がしっかりと描かれています。
二人の心の機微やお互いを想う気持ちを、読者だけはがっちりホールドするように知って読めるので、終始ニヤけて楽しめますよ。
気になったら、ぜひ、読んでみてください。
ボルダリングは少し奇妙なところがあるスポーツです。壁を上まで登ればいいことは決まっていますが、途中の経路が指定されていません。というより足を掛けたり掴んだりする器具「ホールド」を選ぶ選択眼が技術の一つとなるように競技のルールが設計されています。
そこに経路選択を助言するオブザーバー、ラリーなどの自動車競技で言えばナビゲーターにあたる人物を加えると、どうなるか?
道を選ぶ人を、選ぶ。その選択眼が問われます。オブザーバーを選んだ時点で競技中に選べる道が決まります。どのような人を選ぶか。信頼するか。その眼が問われます。
出場選手はいずれも重い過去を抱えています。それは心中に傷として残っています。しかし「経験値」も得ました。辛いことがあったから、それを乗り越えようと足掻くために、経験で得た教訓を胸にペアの相手を選びます。相手を選んだら、あとは信じて進むのです。
道に迷って泣いていれば、落下はしませんが、置いていかれます。「生き残る」のではなく「勝つ」ことを目指すのです。それがスポーツ競技です。競技に臨むなら泣いている暇はありません。道は自分で探します。そして、最後の最後に道を選ぶ人を選ぶため、時間をかけて人を選ぶのです。
本作の作者様は、テンプレに沿わない設定と物語でありながら、各種ラノベ新人賞の上位選考にて常連である人です。作者自身が自分で道を模索してきた人です。作者の人生観が前面に表れています。
フィールドは広く、障害もあります。そこで進む道を選ぶのは自分。
読むと心に火が着きます。
レビュータイトルがなんだか陰陽師とか出てくるファンタジー小説か……って感じですが、この小説は現代舞台のスポーツ青春物。
陰とは一葉くんのこと、陽とはギャルの燈香さんを短絡的に喩えたものです。
陰キャ陽キャという言葉が流行り、定着して久しいですが、この小説の主人公2人は一面的に見ればそのように分類される、真逆の性質を持っています。
しかし、物語が進むにつれ、2人はそういう表層的な部分を越えて、一対一の人間同士としての信頼を深めていく。
それを物語として描写するのに、本作がこの競技を選んだことはまさに百点満点なのではないかと思います。
そして、一番大事な点ですが……ストレートに面白い!!!