概要
たかが140円の話だった。
「お疲れ」
「え?」
ジュースを差し出すと、一瞬キョトンとした顔をしてから、パッと目を輝かせた。
「やさしいじゃん! ありがとな!」
バイトをすることも彼が選んだことだから、別にボクが労ってあげる必要もないのだけれど、彼の苦労話を聞くだけ聞いてなんの労いもないのはなんだが気が引けた。働かなくても親からお小遣いをもらえる自分が、なんだか怠け者の卑怯者に思えてしまったから。貴重な140円ではあるが、この罪悪感を払拭できるならたかが140円だと思った。
今にして思えばそのたかが140円が、すべての始まりだったのかもしれない。
「え?」
ジュースを差し出すと、一瞬キョトンとした顔をしてから、パッと目を輝かせた。
「やさしいじゃん! ありがとな!」
バイトをすることも彼が選んだことだから、別にボクが労ってあげる必要もないのだけれど、彼の苦労話を聞くだけ聞いてなんの労いもないのはなんだが気が引けた。働かなくても親からお小遣いをもらえる自分が、なんだか怠け者の卑怯者に思えてしまったから。貴重な140円ではあるが、この罪悪感を払拭できるならたかが140円だと思った。
今にして思えばそのたかが140円が、すべての始まりだったのかもしれない。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!「犯行」に至るまでを丁寧に、生々しく。
今作において特筆すべきはその「丁寧さ」でしょうか、主人公・井紙の心情や状況が事細かに生々しく書かれており、それが幾重にも積み上がってタイトルにある「犯行動機」が形成されていきます。下手したら単なる「露悪」で終わってしまいそうな題材を、リアリティを持ってしっかりと書き切った一作と言えるでしょう。
私達も日々の生活において「どうしてあの人はしょうもない理由で怒るんだろう?」「ニュースに映るあの人は、罪を犯してまで何をしたいんだろう?」と感じることがあると思いますが、今作を読めばそういう人の気持ちが理解できる……のかもしれません(もっとも、全てがそうとは限りませんし、別段擁護するつもりはあり…続きを読む