「犯行」に至るまでを丁寧に、生々しく。

 今作において特筆すべきはその「丁寧さ」でしょうか、主人公・井紙の心情や状況が事細かに生々しく書かれており、それが幾重にも積み上がってタイトルにある「犯行動機」が形成されていきます。下手したら単なる「露悪」で終わってしまいそうな題材を、リアリティを持ってしっかりと書き切った一作と言えるでしょう。

 私達も日々の生活において「どうしてあの人はしょうもない理由で怒るんだろう?」「ニュースに映るあの人は、罪を犯してまで何をしたいんだろう?」と感じることがあると思いますが、今作を読めばそういう人の気持ちが理解できる……のかもしれません(もっとも、全てがそうとは限りませんし、別段擁護するつもりはありませんが)。

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