親にも見せることが恥ずかしい箱を、見てもらいたい。見せて欲しい。
その箱は、満たされても、まだ足りないと言っている。
ところが、彼女は「怖い」と言った。僕は彼女を大切にしたかったので、辞めた。
やがて何気ない日常の時でも、「ごめんなさい」と気を遣う彼女。僕は自分のことばかりで彼女を傷つけたのだと悔いた。
ところがある日、彼女は自分の箱を見せる。そこで僕は、驚いた……。
好きだからこそ、知って欲しい、知って欲しくないことがあって、ありのままの自分が後ろめたくもなる。
それでも、自分ですら受け入れられない箱を、それごと受け入れてくれる人がいるのなら。
きっと誰もが胸の中には、大切な思い出をいつまでも持ち続けるための「箱」を持っています。これは、その箱が実際に取り出して見られる世界のお話。
恋人を大切に思う主人公は、ある時自分のその箱を恋人に見てほしいという思いに駆られ、緊張しながら見せます。そんな彼の箱を見た恋人は微笑んでくれますが、彼女はお返しに自分の箱を見せようとして……。
心が形になって、誰かに見せられたら素敵だな、と思いながら読み始めた私は、読み進めるうちに言葉を失いました。
同時に、ひたむきに恋しあう彼らの姿が愛おしくて、その幸せを祈らずにはいられません。
誰かと真剣に向き合うことを、最近忘れているかもしれない、と思う人にぜひ読んでほしいです。
「箱」はあなたの大切なものです。「箱」はあなた自身です。「箱」は気軽に見せてはなりません。「箱」はあなたの恥部であり、もっとも大切なところです。
主人公が大切な人と関係を築きあっていく中で「箱」を見せたい衝動に駆られます。そしてある日、見せます。見せられた大切な人……恋人の女の子は、やがて……?
心が温かくなるのと同時に、引き締められる思いのする作品でした。きっと大切な人との関係の築き方の勉強になっているのでしょう。焦らず、相手のペースを大切にしつつ、でも自分の気持ちも大切に。
人の愛し方、それを学んだ気がする作品でした。