ダジャレじみた奇抜な設定を、妙にリアリティのある描写で膨らませて上手くまとめた作品といったところでしょうか。どこか突き放したような文体も印象的で、終始楽しく読むことができました。
割とあるネタ。けれどその発想は無理。そう言わせられる作品でした。そして意外にも冷静。三人称が語り手として適切なのはそりゃそう。
ないと思っていた時期が私にもありました。不思議な疾走感のある文章で、読み終わったときは隅々まで身の詰まったカニの脚を食べた時のような満足感があります。美味しかっ……じゃないおもしろかったです。
漁船事故の生還者が証言した。「カニがビームが出た」と。あまりにシュールな発言のため一時は無視されるが、このことがのちに大事件へと繋がる……。 王道SFのようで、全く予想外の展開に、きっと変な笑いが止まらなくなります。