注文を受け、夕日の色を作ることに没頭していく職人の物語。仕事をするなかで、客の注文を「怖い」と感じたことがある人は多いと思う。不穏な気配が漂っているのに悪意は感じられない。そういうものが一番怖い。いや、それよりも……、「顔も名前も住処もございません」などというおぞましいセリフを言わせる著者が一番怖いのかもしれない。描写の匙加減が絶妙で、余白部分を読者の想像力で補完させる素晴らしい作品です。凝縮された「執着」の物語。時間をかけて、ゆっくりと読んでみてください。
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