「三重県津市西区平山町3-15-7」という場所について語り手である記者の調査記録や、当時の様々なメディアから抜粋される情報や資料などを通して、考え知っていくモキュメンタリーホラー作品。
形を変えて、滝のように登場する実在しない住所についての情報。ネット掲示板の書き込み、バラエティ番組のお便り、不審者情報などなど。あらゆる角度から部分的に得られるこれらの情報の真偽を問うよりも先に、はやく真相を知りたいという気持ちに駆られ、頭の中で取っ散らかっている内に作品にのめり込んでしまいました。
読んでいて納得のいくほどに、ありえそうな現実感のある情報と、少し疑ってしまうようなオカルトじみた非現実な情報。
このまばらさとバランスが妙な不気味さと、フィクションだと分かっていても、本当にこういったできごとがあったのではないかと信じてしまうような、リアリティを醸し出しているのだと思います。
また、物語上で出てきた情報は定期的に登場人物たちがまとめてくれるので、一緒に整理しながら楽しめたので安心でした。
最初はフワフワとしていた足が、物語が進むほどに地へとついていくような心地のよい体験を、是非お楽しみください!
素晴らしい作品をありがとうございました。
架空の住所である「三重県津市西区平山町3-15-7」をめぐる目撃情報の紹介が基本なのですが、そのチョイスが秀逸。2ch風の掲示板だったり、迷惑電話検索サイトだったり、弁護士ドットコムの相談だったり。ネット上ではおなじみの場所で語られるエピソードが積み重ねられることで、架空のはずのこの住所が実在するのかと思えてきてしまう。
ネット小説という媒体だからこそできる手法で、うまい。
いやしかし、ほんとに架空なんだろうか?
検索して、確かめてみる?
でもグーグルマップのストリートビューが写ってしまったら――
考えてもみたら、「ネット小説のおすすめ欄で見かけた」なんて、いかにもこのエピソードにありそうじゃありませんか。
ほら。
あなたももうこの住所を見てしまってるんですから。
一通り全部読みましたが、ネット、テレビ、ラジオ、新聞などと言った全メディアの内容を作中に入れ、会話無しに状況を浮き彫りにしていく手法が素晴らしいです。
これはメタホラー? メタミステリー? ですかね。
私もメタミステリー的な作品を好んでいるので感銘を受けました。
また、このような各メディアによって都市伝説が形を持っていくというリアルさを感じられました。
期待する点として、回が進むにつれて、この謎の地名に関する情報が収束せず、むしろどんどん散逸したり、伏線回収らしき物が余り見られないので、ある程度の謎の収束や伏線回収があればさらに良い物になると思います。