第127話 正体を見せました。

 イーサの町を離れるとすぐ大きな森が見えてくる。

 その奥まった場所に俺は降りた。

 そしてウラノスからも降りる。

「空を飛ぶというのは気持ちいい。

 飛べればアリヨシのところまですぐに遊びに行けそうだな」

 ウラノスに乗ったままのアデラ。

「ペガサスも居るって聞いたが」

「私は線が細くてペガサスは好かん」

「ワイバーンか……」

 俺が指差した先にワイバーンが飛んでいた。

「ワイバーンでもいいな」

 アデラは呟いた。

「じゃあ、何とかしてみるか。ついでに隠していたことも見せてやるよ」

 俺はスプーンへ魔力の供給をやめ、巨人に戻る。

 そして、その辺にあった十メートルほどの木を抜くと、ワイバーンに投げつけた。

 木が枝ごと、ワイバーンの体に当たり、絡まって墜落する。

 俺は走って墜落地点に行きワイバーンの状況を確認すると、気絶はしているが死んではいないようだった。

 木をどかし、ワイバーンの怪我をハイヒールで治す。

 気絶は後でいいか。

 俺はワイバーンを抱え、アデラの元へ戻った。


 俺は人サイズに戻ると、

「ほい、ワイバーン」

 アデラに声をかけた。

「アリヨシは巨人?」

「そう、巨人」

「初めて見た」

「引いたか?」

「引くはずないだろう?

 巨人だぞ?

 カッコいいじゃないか。

 悪魔かなにかだったらどうしようかと思ったが、巨人だしな」

 目を輝かせてアデラが言った。

 巨人の姿の俺を好むと言った者は居たがカッコいいと言った女性は初めてだな。

 どちらも一緒かね?


 ウラノスが俺の肩をハムハムと噛む。

 振り向くとワイバーンは気が付きそうだ。

「アデラ、魔物を従わせるなら、自分が強いと思わせればいいぞ。

 確かアデラも威圧が使えたな。

 やってみればいい」

 アデラはワイバーンの前に行くと雰囲気が変わった。

 威圧を使いだしたようだ。

 ワイバーンは少し構えるが問題ないらしい。

 アデラはチラリと振り返り俺を見た。

 自信がないのかちょっと不安げ。

 俺はワイバーンだけに威圧を使とワイバーンはビクリと固まり震えだす。

「私には無理だったようだ」

 俺が手を出したのに気付いたアデラが残念そうに言った。

「お前、俺の言葉がわかるよな?」

 スレイプニルであるウラノスでさえ分かった言葉、ドラゴンではないにしろ少々はわかるだろう。

 首を横に振り否定するワイバーン。

「首振るんだからわかるよな」

 一抱えもありそうな木を殴って折ると、ワイバーンは首を縦に振った。

「よし、この女はお前の主人になる……わかるな」

 ワイバーンはコクリと頷いた。

「もし、お前の意志でこの女を攻撃したり、わざと落とした時には……これもわかるな。

 俺はお前の魔力を覚えたからな」

 と嘘を言ったが、ワイバーンはコクコクと頷いている。

「餌は貰える。

 お前の頭ぐらいある肉だったら問題ないか?」

 ワイバーンは「えっ」と驚くと、「本当に」と言う感じでこちらを見る。

「アデラ、肉は調達できるか?」

 と聞くと、

「ああ、問題ない。

 生きたままでいいのだろう?」

 アデラがワイバーンに聞くと、コクリと頷いた。

 

 口角が上がっているのは、懐いてきたかな? 


「適当な魔物か家畜を手に入れるようにしよう」

「ということだ。

 これで、この女を主人として認めてもらえないかな?

 俺の妻になる女かもしれないんだ。

 俺の顔を潰されると……ちょっとな」

 威圧をさらに上げると、ブンブンと頷くワイバーン。

 ウラノスは首を振ってヤレヤレと言う感じだった。

 俺は威圧をやめる。

「それじゃ、この女はアデラという。

 お前の主人はアデラだ。

 だからアデラの言うことを聞くこと」

 洗脳のように『アデラ』連呼すると、ワイバーンはコクリと頷く。

「私はアリヨシのように裸馬に乗ったりはできん。

 それに鱗の上に座るのも難しい、だから鞍と手綱をつけさせてもらっていいか?」

 アデラが言った言葉にワイバーンはコクリと頷いた。

「鞍と手綱は特注になるだろう、革職人を呼んで作らねばならんな。

 そうすれば、ウフフフ……」

 イタズラを思いついたような目。

 こいつなら夜間強襲してきそうだ。

「とりあえず、お前は俺とアデラについて来い、アデラの家に行くからな」

 俺たちは再びウラノスに乗ると、イーサの町の駐屯地に戻る。


 駐屯地に戻ると「ワイバーンが襲ってきた」と大騒ぎになっていた、騎士たちは隊形を組み、槍を突き上げワイバーンの攻撃に備える。

「お前ら、待て!」

 アデラは上空から声をかけると、司令官であるアデラの方を向く。

 そして、俺とアデラは地上に降りた。

「お前、私たちの後ろに降りろ、襲われることは無い」

 ワイバーン目掛けアデラが声をかけると、ワイバーンは地上直前でフワリと減速し、地上に降りるのだった。

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