第112話 メテオストライク。
数台の馬車の荷台に最低限の家財を積んで移動。
足腰の弱い者や動けない者は俺が手で運び、他の者は歩いて移動を開始した。
俺は早々に壁まで到着し、ドリスが連れてきた馬車に足腰の弱い者や動けない者を載せた。
「ドリス、あとから来た獣人たちを頼む」
「わかりました」
ドリスの返事を聞き、俺は再び村のほうへ行く。アリーダとすれ違うと、
「もう村に誰も居ない!」
と、アリーダは叫ぶ声が聞こえた。
俺は頷きレーダーを確認すると、確かに村の中には兵士の数の白い光点のみが残っていた。
「ノワル、そろそろ魔法使うから壁の向こうに戻っていてくれ」
俺がそう言うと、黒い影が壁の方へ飛び去る。
広範囲な殲滅魔法を俺の頭から探すと「メテオストライク」が頭に浮かぶ。
本当にあるんだな……メテオストライクって……。
こういう時にしか使えない魔法……使ってみたい!
ちょっとした我儘。
「なになに? 敵味方判別できないので使用に注意してください。
使用後しばらくして指定地点に落下します」
説明書付きかよ!
隕石が落ちてくるんだから、そりゃ敵味方の判別なんて無理だろう。
「しばらく」ってのがどの程度なのかわからないのが怖いな。
えーっと、説明書では隕石の直径の約十倍がクレーターの範囲になるんだったな。
って事は五十メートル程度の隕石を落とせば、単純計算で五百メートルのクレーターができる。
十分この村は吹き飛ぶか。
「ドリス、皆そっちに行った?」
「はい、壁の内側に皆入りました。
馬車は通れませんから馬と荷物だけは壁の内側に入れた感じですね。現在移動の準備をしています」
「ドリス、皆に伏せるように行ってもらえるかな。
大きな音のあとに凄い爆風が行くと思う。
壁の内側に居れば問題ないと思うが、一応ね。
あと、絶対門のほうに近寄らないように……爆風が吹き抜けるから。
馬は暴れてはいけないので押さえつけずに放っておけばいい、馬車に繋いでいる馬も外しておけ、あとで回収する。
そっちの準備ができたら連絡をくれるか?
村を消す」
「了解しました、早急に対処します」
ドリスの返事が返ってきた。
グレアとノワルにも壁の内側で人化して伏せているように言っておく。
ウルとベアトリスには、
「デカい音がするけど村を消すために魔法を使った音だから心配しないでいい」
と言っておいた。
「アリヨシ様、皆伏せて準備できました。門付近には誰もいません」
ドリスから、準備完了の連絡が来る。
「それじゃ、やるぞ」
村から結構離れた場所に立つと、直径五十メートルの隕石をイメージし落下地点を指定してメテオストライクの魔法を使うと、ごっそり魔力が抜ける感覚。
上空に光り輝く星が現れたのを確認しながら全速力で走ると、表面積を小さくすることを考え、そのまま縮小化して伏せる。
「ドン!」と低く鈍い衝撃音が聞こえたあと、バリバリという木が倒れる音と共にものすごい爆風を感じる。
どのくらい経ったのだろう、爆風が収まっていた。
俺の上には爆風になぎ倒せされた木が覆いかぶさっている。巨人に戻って立ち上がると大きなきのこ雲が見え、その根元は燃え上がり赤く染まっていた。
大丈夫かね?
急いで、壁の方に戻ると壁は健在。
「グレア、ノワル、ドリス、大丈夫か?」
と聞いてみると、
「ご主人様、大丈夫です」
「我もじゃな」
「周囲の木が倒れましたが、伏せていたおかげで皆怪我もありません」
三人も獣人たちも問題ないようだ。
その後、
「ご主人様、やり過ぎです」
「やり過ぎじゃな」
「やり過ぎですよ」
三人に文句を言われてしまった。
まあ、これじゃ仕方ないか。
とはいえ、使ったことが無い魔法。
文章での説明しかない。
使ってみてわかることもあるだろう。
今後こういうこともあるかもしれないな。
注意しないと……。
「じゃあ、戻ろうか」
俺はレーダーで馬を探し出し、馬車に繋いだ。
余った馬は手綱を引き連れて行歩く。
それに続き獣人たちは歩き始めた。
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