第111話 決意をしてくれました。
柵で囲われた収容所。
「あっ、ご主人様」
俺に気付いたグレアに話しかけられた。
「長引いてるみたいだね」
「そうですね」
俺の声に気付いたアリーダが俺の方を向いた。
「苦戦中?」
「ごめんなさい、上手くいかなくて」
申し訳なさそうにアリーダが言った。
「気にするな、生活がガラッと変わる判断だ。
皆がためらうのは仕方ない」
俺は、アリーダの頭を撫でながら言う。
そんな俺を見て、
「あなたは?」
村の代表と思われる男が俺に話しかけてきた。
「アリーダを助けたアリヨシという者だ」
男は俺を見ると、
「アリーダを助けていただきありがとうございました」
深々と頭を下げる。
「私はこの村のリーダーを務めるミカルという者です。
アリーダの父親でもあります」
アリーダのオヤジさんだったのね。
「俺は、アリーダにこの村の人を助けて欲しいと言われて来たんだ。
助かりたければ壁の向こうへ逃げて欲しい。
向こうに行けば食料もあるし畑も作れる。仕事もあるし給料も払う。
ここに居て帝国に虐げられるよりは安全だと思うんだけどね」
「なぜそんなに、我々の事を」
ミカルさんは聞いてきた。
アリーダが居るとはいえ、初対面でそりゃ信用できないよな。
「アリーダに聞いたんだろ?
俺は巨人だ」
そう言うと、縮小化を解き巨人に戻ると、それを見て獣人たちが驚いた。
「俺、壁向こうでいろいろやってて、正直手伝ってくれる人が欲しいんだ。
人手が足りなくてね。
それに来てもらえれば、あなたたちを守ることもできる」
それに合わせてグレアはフェンリルの姿に戻った。
「フェンリル……。
我々獣人の神」
ミカルさんはグレアを見上げた。
「どうだろう、俺の所に来てもらえないかな?」
俺は再び縮小化するとそう話しかけた。
ミカルさんは少し考えると村人たちに振り返り、
「このままここに居ても帝国の兵たちに迫害され、無理矢理働かされるだろう。
アリーダが言うように私はこの巨人を信用しようと思う。
皆の衆どうだろう、この村を捨て巨人のところに行かないか?」
というと、
「俺はこの魔物たちが優しいのを知っているから、巨人のところへ行く」
アリーダは宣言する。
しかし一人の年老いた獣人が、
「儂や婆さんは足腰が弱い、お前たちの邪魔になってはいかん、だからここに残る」
と言った。
「アリヨシさんは壁の向こうまで行けば馬車を準備してるんだ。
それにこの村は魔法で消してしまうと言っている。
爺さん死んでしまうよ!」
アリーダが声をかけ、
「今は兵士たちも痺れて動けません。
今のうちに家財を集め移動してください。
私は村人たちが離れたのを確認した後、この村を兵士ごと消滅させます。
あなた達は私の魔法で消し飛んだことになり追われることも無いでしょう」
とこの後の流れを俺が続けると、
「私もアリーダと巨人の下へ行こうと思う。
このまま暮らしても、わたしたちだけではなく子供たちも苦労する。
壁の向こうであれば仕事もあり食料もあるというじゃないか、今の生活よりも下になることは無いだろう」
リーダーであるミカルさんが村を捨てる意思を表に出した。
「だったら俺も行く」
「私も……」
と声が上がった。
「儂も行きたい。でもこの足腰じゃ……」
再び年老いた獣人が言う。
「だったら俺の手に乗ればいい、壁の向こうに連れて行くから。
他にも足が悪い、体が悪い者が居たら言ってくれ、俺が連れて行く!」
というと、
「それなら……」
とぽつぽつと声が上がった。
結局全員が俺の所に来てくれることに決まる。
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