第72話 結果、砂糖ができました。

 シロップの水分は水の精霊に依頼して抜いてもらう。

 すると、砂糖の塊?ができた。

 結構な量だ。作り上げた砂糖大根の糖度って高いんだなぁ……。

 軽く塊を砕き一口食べてみると、おお……甘い……。

 何をしているんだろう? って感じで円卓に座って覗いている四人組。

「ベアトリス、あーんして」

 可愛い口を開け「あーん」をするベアトリス。

 口に砂糖の欠片を放り込んだ。

「あっ、甘い」

 頬を押さえて驚くベアトリス。

「ご主人様、私も」

われも」

「アリヨシ様、私も」

 雛鳥のように口を開けて待機する三人。

 欠片を放り込む。

「アリヨシ」

「ご主人様」

「アリヨシ様」

「「「あまーい!」」」

 三人も甘さに驚く。

 一応純粋な砂糖だからなぁ。


「ベアトリス、コレって金になる?

 あの畑で作っている飼料大根で作った砂糖なんだ。

 南方産の砂糖より安くして周囲に売り払えば結構な利益になるんじゃないか?」

 ベアトリスは腕を組み、少し考える。

 頭の中で計算しているのだろう……。

 そして、

「はい、莫大な利益を得ると思います。

 北部で砂糖が生産できるのです。利益が出ないはずがありません!」

「ちなみに、この前買った壺の砂糖でいくらぐらいするんだ」

「えっ、えーと」

「言い辛いぐらいに高い?」

「はっ……はい。金貨十枚ぐらいでしょうか」

「高っ」

 お徳用上白糖一袋百円で売っているスーパーを思い出す。

「飼料大根を煮出す燃料があれば基本出来るからな。

 燃料を薪にするなら木灰は燃えカスからとれるから要らないな。

 製造費については激安じゃないかなぁ。

 あとは輸送費がどのくらいかかるかだろうね」

「薪はこの周辺の森から確保するとして、やはり輸送費ですね」

「ただな、圧倒的に人手が少ない。

 近くの村も人手が足りないから俺が開墾した場所に手が出せなかったんだ。

 製法は簡単だから俺じゃなくてもできると思う。

 品種改良した飼料大根。

 んーもう砂糖大根でいいや。

 この種さえ外に漏れなければ希少性は確保できるんじゃないかな」

 ぽかんと話を聞いているケモノーズ。

 口に砂糖のかけらを追加した。

 再びもぐもぐする

 ウルはある程度わかるのか頷いていた。

 ウルは結局何者なんだろう……。

「ベアトリス、悪いんだがオヤジさんと相談してきてくれないか?

 岩塩はベアトリスが任されてはいるが、砂糖となると一応オヤジさんに一度相談しておいたほうがいいだろう」

「はい、わかりました。」

 その返事のあと、

「これが事業として成立すればアリヨシ様が……フフフ……」

 ボソリと何か言うベアトリスの不穏な声が聞こえる。

「ノワル、悪いんだがベアトリスを家まで送ってもらえないか?」

 ノワルは口をもぐもぐさせながら、

おほおうりょふかひりょうかいなのじゃ」

 と言った。


 ベアトリスは立ち上がり俺に近寄る。

「アリヨシ様、早速行ってきます。

 出来上がった砂糖を何かに詰めてもらえませんか?

 ノワルさんドラゴンに戻ってもらえないでしょうか?」

 俺は、調理場から空いた壺を探し出しその中に砂糖大根産の砂糖を入れる。

 ノワルは少し離れバハムートに戻った。

「この砂糖はお父様に見せるために持って行きます」

 ベアトリスは壺を受け取ると、小脇に抱えてノワルに乗る。

「ベアトリス頼んだぞ。

 ノワル、気をつけてな」

「大丈夫じゃ。

 われを倒せるのはアリヨシぐらいなのじゃ」

 ニヤリと笑うノワル。

「それでは行ってきますね。

 ノワルさん行きましょう」

「了解なのじゃ」

 ベアトリスを乗せたノワルはクルーム伯爵の館へ向かう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る